今や政府の収入の半分が借金という異常事態。財政再建の必要性が叫ばれて久しいが、状況は悪化するばかりだ。なぜ財政再建はうまくいかないか、その原因と対策を連載で送る。第1回目は政府の予算編成から決算までの仕組みを解説する。

たなか・ひであき
明治大学公共政策大学院教授 1960年生まれ。1985年、東京工業大学大学院修了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に『財政規律と予算制度改革』(2011年)

連載の狙いと目的

 政府の2013年度予算編成が終盤を迎えているが、12月16日に衆議院選挙が行われることが決まったため、編成作業は実質的に中断している。政権が定まらないと、予算編成の方針も定まらないからである。しかし、デフレ下での景気対策や成長戦略、増大する社会保障費のコントロール、復興予算の使い方など、問題は山積しており、経済界からは早急な対応を求める声が出ている。財政需要はますます増大する一方、最近の税収総額はなんと25年前の水準にとどまっており、財政の悪化が進んでいる。財政再建も待ったなしだ。

 予算は、当然ながら、家計や企業にもある。これらの予算と政府の予算は何が違うのだろか。そもそも、政府の予算はどのようにつくられるのだろか。家計や企業も借金しているが、政府のように収入の半分が借金などという状況ではない。なぜ、政府部門では赤字が増えるのか。諸外国の中には、財政再建に成功し赤字の小さい国もあるが、日本と何が違うのか。なぜ日本は財政再建できないのか。では、どうすればよいのか。

 本稿では、5回の連載を通して、こうした予算に関する疑問に答えたい。特に、予算の政治的な側面に焦点を当てて議論したい。問題を解決するためには、予算の何が問題かをつきとめることが必要である。問題の本質がわかれば、おのずと解決策も明らかになる。