「誤った情報」という表現が8回、「いわれのない物語」という表現が3回、「誹謗中傷」が2回だ。さらに「根拠のない多くの厳しい批判」「否定的な報道」「根拠のない批判」「事実に基づかない情報」など似た表現も頻出している。

 もちろん、小室家の金銭トラブルなどについて質問された回答文書でこのような表現になるのは分かるが、一方的に自分たちの思いを告げる会見の場でもやたらとこの手の言葉が飛び出ているのだ。明らかに多すぎる。こっちは誰もそんなことは聞いていないのに、自分たちから率先して話題にしている。

これまで危機管理の世界では
「トランプ話法」は悪手とされてきたが…

 筆者はこれまで300件近く記者会見の事前アドバイスや模擬会見トレーニングなどを経験してきた。国会議員や経営者のスピーチ原稿も作成してきた。しかし、会見の原稿の中で、自分たちを批判する者たちの信用をおとしめる主張をここまで繰り返すケースはあまりお目にかかったことがない。

 危機管理の世界ではこれまで、「人を呪わば穴二つ」ではないが、自分の都合の悪いニュースや批判意見を「デタラメ」「うそつき」などと過度に攻撃することは、事態を悪化させると考えられてきたからだ。

 もちろん、本当に事実無根のデタラメで、会社の事業やブランドに大きな損害を与えているようなものならば法的手段に出るべきだし、釈明会見も開くべきだ。しかし、まったくの事実無根とは言えない情報、それなりに根拠のあるニュースなどに対して、「フェイクニュースだ」とたたいてしまうと、批判していた者たちを挑発して、さらに厳しい追及、痛烈な批判を引き起こしてしまう。逆効果なのだ。

 では、どうするのかというと、客観的な事実を積み上げて、淡々と否定をするのだ。批判をしてきた人間に罵声を浴びせたい気持ちをグッと抑えて、明確な根拠を示して事実ではないと冷静に答える。相手の挑発に乗ったら負けで、ブレないメッセージを粘り強く繰り返すのが、リスクコミュニケーションの基本とされているのだ。

 しかし、その常識を根底から覆したのが「トランプ話法」である。質問をされなくても、自分を批判しているニュースを取り上げて「フェイクだ」とケンカを売っていく。「マスコミは信用できない」「ワシントンのエリートと組んで、改革を進める自分を抹殺しようとしている」という陰謀論まで吹聴して批判を全否定して、自身の求心力につなげてきた。

「敵を激しく攻撃することで、自分の支援者を増やす」というリスキーな危機管理テクニックである。そんな「トランプ話法」をまさか秋篠宮家の長女が、しかもおめでたい結婚会見の場で使うというのは、かなり「異常」なことと言っていい。