英単語記憶法とは写真はイメージです Photo:PIXTA

学生も社会人も、英語学習の際に苦労するのが「英単語の暗記」だ。一方で、イギリスで生まれ、現在、世界40カ国で開催されている「メモリースポーツ」という記憶力を競う大会がある。競技人口は年々、増加しており、2~3年前と比べて今では10倍以上に増加しているという。このメモリースポーツの日本選手権で優勝し、働きながら東京大学の大学院へ通う「東大記憶王」の青木健氏は、メモリーアスリート(メモリースポーツの競技者)必須の記憶術「場所法」との組み合わせを勧めている。この「場所法」とは一体何なのか? 「タモリ倶楽部」に登場するなど話題沸騰中の青木氏に直接、聞いた。(聞き手/ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光)

世界各地で記憶力を競う
「メモリースポーツ」の人気が上昇中

――記憶力日本チャンピオンとのことで、記憶力に関する大会があるのでしょうか?

「記憶力チャンピオンです」と自己紹介をすると、ほとんどの人から「天才ですか?」という反応が返ってきます。でも私は見たものすべてを記憶しているだけではありませんし、当然、天才でもありません。大学受験では浪人もしましたが志望大学には入学できませんでした。

 大学2年生の時、深夜にふとテレビをつけると「世界記憶力選手権」という番組が放映していました。世界各国の人たちが記憶力を競っていて、そのときに初めて、記憶力を競う「メモリースポーツ」という大会が世界にあることを知りました。

 その番組に衝撃を受け、次の日には早速、トランプなどを使って記憶力を鍛えることにしました。試行錯誤を繰り返し、多くの時間をかけて、自分なりの記憶術を見いだし、大学3年生の時には、メモリースポーツの日本選手権で準優勝を獲得。翌年には優勝することができ、記憶力の日本チャンピオンになるという目的を達成することができました。

青木健・記憶力日本チャンピオン、世界記憶力グランドマスター、日本メモリースポーツ協会会長青木健(あおき・たける)
記憶力日本チャンピオン、世界記憶力グランドマスター、日本メモリースポーツ協会会長。出版社勤務を経て、東京大学大学院で脳科学に関する研究を行いながら、記憶術やメモリースポーツ、ルービックキューブなど脳のスポーツを教えるBSA(ブレインスポーツアカデミー)を運営している。著書に『記憶力チャンピオンの超効率 すごい記憶術』『東大式 頭の回転が100倍速くなるドリル』(共に総合法令出版)、編著に『記憶王が伝授する 場所法英単語』(三省堂)。

――メモリースポーツは具体的にはどういったことを競うのですか?

 たとえば「トランプ記憶」という種目があります。これは、シャッフルしたトランプ52枚の順番を覚えるというもので、陸上競技のように、トランプを覚えるタイムを縮めることのおもしろさに魅了される人が多くいます。

 メモリースポーツ自体は、1991年にイギリスで生まれた記憶力を競う大会で、世界40カ国で開催されています。競技人口は年々、増加しており、2~3年前と比べて今では10倍以上に増加しています。

 たまにテレビなどで、1分で100桁の数字を覚える人や、一瞬でトランプの順番や歴史の年号を覚える人が登場したりしますね。番組は「天才」と紹介しますが、これらは後天的にトレーニングして身につけたテクニックを披露しているのです。

――記憶力を高めることのメリットは何でしょうか?

 現代はテクノロジー技術が発達し、スマホやアプリがあれば、昔のように、物事をいちいち暗記しておく必要はありません。しかし、記憶力を高めておくと、業務上で取引先の人の顔や名前がパッと浮かぶことで信頼関係を高められたり、話をふられたときにすぐに売り上げや在庫数を伝えることができたり、資格試験や学校の勉強を効率的に進めることができたり、日常でふと入ったカフェのWi-Fiのパスワードを即座に思い出したりと、ちょっとしたことで役立ちます。「ちょっとしたこと」とはいえ、その積み重ねは案外、大きなメリットを生むことがあります。何より記憶力が高いと、自分に自信を持てるようになるのです。

「記憶術」というと、世の中には怪しい高額なセミナーも多くあるようですが、記憶術というのはあくまで「記憶力を高める」方法、正確には「記憶する技を高める」方法であり、基本にのっとり、しっかりとトレーニングすれば、年齢や性別に関係なく誰でも伸ばすことができるテクニックです。

――記憶力というのは、「生まれつきの能力」ではなく、磨けば誰でも伸びる「スキル」ということですね。でもさすがに年を取ると脳も衰えるので、そのようなスキルを伸ばすことは難しいのではないでしょうか?