別子銅山で住友イズム注入
強固な結束力故の弱点も…
五日会は白水会メンバーの副社長や企画総務担当役員らが出席する親睦会だ。他にも人事部長の人泉会、広報部長の三木会などがある。
中でも最も重要な中枢組織が、泉会だ。白水会メンバー企業の総務部長で構成し、毎月第2金曜日に開催される。白水会と同様に代理出席を認めず、幹事会社は1回ごとの持ち回りだ。
泉会はグループ広報委員会の予算権限を持ち、総務部長は泉会の前に開催される商標委員会の委員も兼ねる。白水会で話し合われる議題の事前調整やグループ行事の決定、共同施設の運営などを協議する実務者会合だ。
これら本社中枢の会合だけでなく、地方でも支店長クラスの親睦会などがある。こうした場では「『銀行さん』『商事さん』など住友の名を付けなくて呼び合える」(住友グループの地方支店経験者)といい、住友に親近感を持つ触媒となっているようだ。
一般社員に向けても事業精神の教育に余念がない。研修の一環として取り入れているのが別子銅山の登山体験だ。住友金属鉱山では、入社時と幹部、役員昇格時の最低3回、登山を体験する。往年の銅山事業を社員が実体験として感じられる場を持っていることも住友の強みといえる。
別子銅山の登山体験はグループ企業の多くで導入され、近年は住友不動産の社内に常設事務局も設置した。こうしたことからも、住友は組織的にグループ内の結束を強化しているといえそうだ。
一方、結束力の強さには、同時にデメリットもある。白水会の入会基準が厳し過ぎて、グループ拡大が望みにくいことだ。
前述のように白水会メンバーは発足当時12社で、現在は19社だ。三菱金曜会の27社、三井二木会の29社と比べていかにも少ない。
3グループとも戦後の発足時から加盟会社が増えたが、白水会の場合、退会した企業も少なくない。その代表例が旧住友金属工業だろう。住友の「御三家」といわれた直系企業だったが、12年の新日本製鐵(現日本製鉄)との合併に伴い、白水会からの退出を余儀なくされた。
「純血」を維持しようと思えば、排他的とならざるを得ない。強固な結束力は、内向き思考に陥りかねない危険性もはらんでいるといえよう。