和平合意の妨げになっている問題のひとつは東エルサレムの扱いだ。東エルサレムについて、パレスチナが「将来の独立国家誕生時の首都」と位置づけているのに対し、イスラエルも「永遠で不可分の首都」として譲らない。冒頭で述べた2021年5月の武力衝突のきっかけも、旧市街と東エルサレムをつなぐダマスカス門に、イスラエルがバリケードを設置してパレスチナ人を怒らせたことにあった。

アラブ諸国がイスラエルと国交樹立、
孤立を深めるパレスチナ

 では、国際社会はパレスチナ問題にどう関わっているのだろうか?

 バラク・オバマ大統領時代のアメリカは、イスラエルにヨルダン川西岸での入植地建設凍結を求めていたのに対し、続くドナルド・トランプ大統領はイスラエルの首都をエルサレムに認定してアメリカ大使館をエルサレムに移転させるなど親イスラエルの立場をとった。2020年にはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とともに和平案を発表したが、パレスチナに拒否されている。

 アラブ諸国も立場を変えた。エジプトとヨルダン以外のアラブ諸国は長らく「パレスチナ問題の解決なくしてイスラエルとの国交樹立なし」という立場をとってきたが、2020年8月にはアメリカの仲介によりアラブ首長国連邦(UAE)がイスラエルとの国交正常化に合意。9月にはバーレーン、12月にはモロッコがそれに続いた。パレスチナはこうした動きを「アラブの大義より短絡的な実利をとった裏切りである」と非難している。パレスチナは次第に孤立してきているのだ。

 パレスチナ自体も2004年にアラファトが死去した後、穏健派の政党ファタハと急進派の政党ハマスに分裂して内戦状態になるなど、一枚岩でなくなってきている。現在はヨルダン川西岸をファタハが、ガザ地区をハマスが支配している状態だ。

「世界で最も解決が難しい紛争」といわれるだけに、和平を実現することは一朝一夕にはいかないようだ。