読者の中には「100円ショップで買ったからじゃないの?」「消費者向けには安くないと売れないから輸入品じゃないの?」「農家の人は野菜を栽培しているから、業者から買わずに自前の種子を使っているんじゃないの?」と思われる方もいるでしょう。

 ところが、野菜を栽培する農家の人も、ほとんどが外国産の種子を種苗会社等から購入しています。

 ダイヤモンド・オンラインの2021年10月18日の記事『「国産シイタケ」の多くは中国栽培、本当の栽培地を見分ける簡単な方法とは』でも述べましたが、農産物の原産地とは「収穫地」を指します。したがって、輸入された種子を蒔いて栽培した野菜であっても、収穫地が日本であれば国産野菜になります。

 野菜の自給率は、2020年度で80%ですが、野菜の種子生産は約90%が海外で行われています。つまり、種子の自給率は10%程度ということです。

 ただし、稲、麦、大豆、ばれいしょ等の主要農産物の種苗(種子や苗)は、都道府県の試験場等が開発した優良な品種を元にして国内の種苗生産地で増殖したものが供給されています。

日本で種子を
生産しない理由

 では、日本で栽培されている野菜の種子を、どうしてわざわざ輸入しなければならないのでしょう。なぜ日本の農家は、種子を採らない(自家採種しない)で種苗会社から購入するのでしょうか。

 その理由の一つは、種子生産用の土地と気候条件です。

 家庭菜園で自家消費分程度の野菜を栽培するための種子づくりであれば、それほどの土地(畑)は必要ありません。しかし、農業としての種子生産となると、実がなるまで(種子ができるまで)一定量の採種用の野菜も栽培しなければなりません。

 しかも、種子を生産する畑と他の植物の畑をある程度離さなければ、他の植物の花粉がくっついて違う品種の種子ができることがあります。本格的に品質の良い種子を生産するとなると、販売用の野菜栽培とは別に、ある程度の広さの種子生産用の畑を確保しなければなりません。狭い日本では、採種用の畑を確保することは至難の業なのです。