「交際費の損金算入」で
忘年会が息を吹き返すと言える理由

 もし、今の日本で、戦前のように交際費を大企業の経費として無制限に認めるようにしたら、どのような困ることがあるのでしょうか?

 法人税収が減るというのが直感の答えなのですが、本当にそうか考えてみましょう。昭和57年の日本には、今と違って無かったことが二つあります。一つは「消費税」が無かった。そしてもう一つは、若い方はびっくりするかもしれませんが、日本の大企業には「利益を追求する習慣」がありませんでした。ある程度利益が出ていればOKで、それ以外のお金は(経費計上できる)投資に回すのが当時の日本の大企業でした。

 これが、今は違います。企業が交際費を使えばかならず10%の消費税収が増える。しかも企業経営者は資本市場の方ばかりをみるようになってきたため、利益が減るような浪費はしたくないというようにスタンスが変わりました。

 つまり、仮に(社内も含めた)交際費が全額経費に算入できるようになったとしても、利益を減らして遊興に投じるという可能性は昔ほどはありません。社員の結束力を高める社内の宴会と、取引先とのつながりを強める接待が増えるだけです。そしてそれらは長期的な利益を増やす企業にとっての、業務上必要な投資に他なりません。

 そして、交際費や社内飲み会の会議費を経費として無限に認められるようになれば、経済全体でかなりの規模で接待と社内の飲み会は増加するでしょう。

 そのことで実は消費税10%に加えて飲食店業界が増収増益となり、結果として法人税収も増える効果が起きます。経済学を学んだ人ならすぐにわかるとおり、そこにさらに乗数効果が期待できるので、日本経済全体では交際費枠を増やしたことが数倍(とはいってもおそらく2.5倍程度の規模だとは思われますが)で景気浮揚に寄与するようになるでしょう。

 ここで強調しておきたいのですが、リモートが増えるということは企業や従業員の生産性を上げますが、日本経済にとっては毒薬で、その成長を止める副作用が大きいのです。通勤が減り、出張が減り、顔を突き合わせる回数が減る。仕事がスマホとパソコンを見つめていれば完結する時代は、経済を縮小させる力が働く時代でもあるのです。

 アフターコロナの日本経済は戻ってきたとしても、同じところには戻ってこない。今の時代、リモートと「#忘年会スルー」によって、忘年会需要は構造的に3~4割減の危機を迎えていると私は思います。

 飲食業界全体でそれを乗り越えるには、それに代わる新たな飲み会需要の創造しかない。企業がらみでいえば少人数、高頻度、高単価の飲み会需要創造が必要です。それは、接待と職場の少人数の飲み会の頻度が増えることが、一番現実的な打開策でしょう。

 だとすれば、国としてこの問題を解決するためには、「社内向けを含め交際費制度を戦前の運用に戻す」というのが逆転ホームランのような政策に思えるのですが、自民党税調と財務省の皆さん、それぞれのお立場でどう思われますか?

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)