中国の若者たちのエネルギーは習近平への反発に向かうのか?
しかし、彼らの「愛国ぶり」が習近平政権支持に向いているかというとそうではない。
動画で見逃せないのは、一部の熱狂的なEDGファンが「シージンピン、マオビーーン!」と叫んでいたことだ。「シージンピン」とは習近平、「マオビン」とは「病気」を意味する中国語だ。明らかにそれはゲームを規制する国家主席への反発だった。
街頭での狂喜乱舞は、確かに彼らの祖国愛を映し出したものだった。昨今の国際政治の舞台では、中国の覇権主義行為が世界各国から批判され続けているだけに、「中国の勝利」に溜飲を下げたのかもしれない。しかし、一部の視聴者たちが喜びの表現と同時に見せたのは、ゲーム時間を規制する習指導部への不満である。
ネットゲームの空間では、中国の若者のエネルギーが渦巻いている。そのエネルギーはまかり間違えば、習指導部に反旗を翻すことにもなりかねない強い力ではないかと推測できるのだ。
1960年代、中国の一部の若者は「毛沢東」というカリスマの下に団結を見せた。80年代末には、中国の一部の若者が「民主化の要求」で団結を見せた。そして2020年代、若者たちは「民主や自由」ではなく、「ゲーム愛」で団結を見せたのである。
米国から中国の動向をウオッチする華僑の一人は「中国の今の若者は、当局の規制や取り締まりをものとも思っていない」と言う。特に今年は、習指導部による若者の趣味や嗜好に対する規制が目立つが、それは中国の「Z世代」に相当手を焼いていることの裏返しでもある。未成年者のゲーム時間が厳しく規制されても、ネット上ではアカウントのレンタルや売買が行われるなど、「いたちごっこ」が続いている。
習指導部は、中国の若者の飽くなき「ゲーム愛」と、今回の視聴者動員数をどう受け止めるのか。LoLの世界大会の決勝戦は毎年秋に開催されるが、“ゲーム観戦禁止令”など出そうものなら、そのときこそ習指導部にとって最悪の事態を招くことになるかもしれない。