11月24日、新生銀行が突如、SBIホールディングスのTOB(株式公開買い付け)に対する買収防衛策を撤回。その賛否を諮る予定だった株主総会の中止を発表した。新生銀翻意の裏事情とは何か。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
新生銀が土壇場で
SBIと「手打ち」の衝撃
「壮大な茶番だった」。新生銀行幹部がそう吐き捨てるのも無理はない。SBIホールディングス(HD)が新生銀行に対して仕掛けていた敵対的TOB(株式公開買い付け)は、衝撃的かつあっけない幕切れを迎えようとしている。
新生銀は10月21日、SBIHDのTOBに「反対」の意見を表明。買収防衛策として掲げていた対抗措置の発動について株主に賛否を諮ろうと、11月25日に臨時株主総会を開催する手はずを整えていた。
ところが、だ。新生銀は臨時株主総会の前日の夕方になって突如、反対意見の「中立」への変更を発表したのだ。それに伴い、TOBへの対抗措置も不要になったとして臨時株主総会の開催も中止した。これで、新生銀はSBIHDの子会社になる公算が高まった。
「SBIHDに、(大株主である)預金保険機構からの質問への回答書に新生銀が記載した経営方針(11月12日に公表)を、『尊重する』と言っていただいた。これにより、(TOB成立後のSBIHDの新生銀経営に対する)不透明感が大きく払拭された」
11月25日、工藤英之・新生銀社長は意見変更の理由をそう説明したが、それを額面通り受け取る金融関係者は少ない。というのも、臨時株主総会は新生銀に不利な形勢になりつつあった。新生銀株を合計20%強保有する預金保険機構とその傘下の整理回収機構が、防衛策に棄権、もしくは反対する方針を固めていたというのだ。
SBIHDの新生銀株の保有比率は、TOB開始を発表した9月9日時点ですでに約20%あった。国が賛成票を投じなければ、防衛策可決の基準である「出席株主の議決権の過半数の賛成」クリアが、がぜん遠のくところだったわけだ。
しかし新生銀関係者によると、新生銀が翻意を決めた直接的な理由は国に見放されそうになったことではなさそうだ。背景にはもっと“実利的”な事情があるという。