国立成育医療研究センターは、コロナ禍での子供の健康に関する調査を続けている。
10月21日に公表された調査結果では、2020年度中に「神経性やせ症(神経性食欲不振)」が増加していることが報告された。
「子どもの心の診療ネットワーク事業」に参加する26施設が回答したもので、神経性やせ症疑いで初めて外来を受診した20歳未満の男女はそれぞれ1.6倍に増加、新規入院患者は男子が横ばいだったものの、女子は1.4倍に増加した。参加施設からは、患者が重症化し入院期間が延びているとの声もあがっている。
神経性やせ症は摂食障害の一つで、極端な食事制限や食べ吐きを繰り返し、体重が目に見えて減少する疾患だ。適正な体重や体形に対する認知のゆがみが生じ、本人が深刻さを認識できないという特徴がある。病気の進行で生活に支障が生じ、ときには命に関わる。
神経性やせ症が増加した背景には、コロナ禍の肥満リスクに対する不安やストレス、行動制限の影響に加えて、コロナ太り対策をうたうマスメディアの情報やSNSの影響が考えられるという。
実際、同センターの「コロナ×こどもアンケート」の第4回調査(20年11~12月実施)では、半数の子供が「あまり食欲がない、または食べすぎる」と回答し、第5回調査(21年2~3月実施)でも、回答者の38%が「太りすぎ」を気にして、およそ半数が「痩せたい」と回答している。
心配なのは、第5回調査で全体の4%が「食事の量を普段の3分の2以下に減らす」、2%が「食べたものを吐く」と回答している点だ。今回の調査で明らかになった以上に、摂食障害リスクを抱える子供たちが増えていると考えていいだろう。
摂食障害は本人の病識がない一方で、過食や食べ吐きの事実を隠そうとするため、家族の気づきが遅れ受診につながりにくい。外食を嫌がるそぶりはないか、食べた後でトイレにこもる様子はないかなどに気を配ってみよう。
コロナ太りを気にする言動が続くときは、かかりつけの小児科医に相談するのが得策だ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)