至れり尽くせりなサービスと楽しい演出で人気の高級店

海底撈はお一人様用の小鍋ではないが、大鍋の中を区切り、一区画を一人ずつで味わうスタイルである。具材の「精鋭化」や高級感あふれるムードのインテリア、そして何よりも大きな話題になったのがそのサービスだった。
まず席待ちの客たちが退屈しないように、靴磨き職人やネイル師を常駐させており、お客は入店待ちの間に無料で靴を磨いてもらったり、ネイルをしてもらったりできる。またナッツなどのスナックやフリードリンクを提供、一部では託児サービスも併設している。
席に着くと、今度は汁飛びを防ぐためのエプロンはもとより、女性が髪を結ぶためのゴムやクリップ、メガネ拭きなどを準備。従業員がエビの殻を剥いてくれたり、テーブルのすぐ横で注文したラーメンを伸ばすパフォーマンスを見せてくれたり、誕生日のお客のために歌を歌ったり、というサービスぶり。さらには、四川省の「変臉」という、演者の動きに合わせて顔に着けたマスクが変化する秘伝芸能のパフォーマンスがある店まであって、鍋を味わいつつ楽しめると超人気店舗になっていった。


2012年には、海外初店舗としてシンガポールに進出。その後日本でも東京・池袋を皮切りに、すでに関東圏で3店舗、大阪1店舗、福岡1店舗の合計5店舗を展開している。筆者も開店したての池袋店に行ったことがあるが、当時予約を受け付けていなかった店の入ったビルの階段伝いに、ほぼ9割が中国人とみられるお客たちが長い列を作り、じっと順番を待っていた。「とにかく海底撈に食べに行きたい!」という、彼らの熱意が伝わってきた。
そんな海底撈が、なぜ一挙に約5分の1もの店舗を閉鎖することになったのか?