子育て世代の英語教育熱は年々、高まる一方だ。昨年から小学校で英語が正式教科となり、さらに今年から始まった大学入学共通テストでは英語の出題パターンが刷新されるなど、英語学習を取り巻く環境が大きく変化しているからだ。
いまや、日本の大学ではなく海外の大学に直接進学するケースも珍しくない。そのため、子どもが学校で後れを取ったり大学受験で失敗したりしないように「家庭で英語をどう教えればいいのか」、「どうすれば英語力が伸びるのか」と悩む保護者も多いだろう。
そこで参考になるのが、元イェール大学助教授で現在は英語塾の代表を務めている斉藤淳氏の著書『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)だ。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、「英語が大好きな子」を育てるために親ができることについてご紹介する。

子どもの英語力が伸び悩んでしまう「NGな教え方」とは?Photo:Adobe Stock

「英語が大好きな子」を育てるには?

 今回は英語学習の具体的なメソッドです。まず初期フェーズで大切なのは、お子さんが英語に親しみを持ち、ごく自然に英語の世界に入っていけるように準備をすることです。

 とくに3~6歳くらいの子については、「遊び」こそが最大の学び場。「英語嫌い」にさせないように配慮し、「英語は楽しい!」というイメージ、「ぼく/わたしは英語ができるんだ!」という自信をつくっていくようにしましょう。

 子どもに英語好きになってもらいたいときに、大切にするといいことは3つあります。

1)「勉強」と言わない/思わせない
2)いちいち日本語に言い換えない
3)「音と映像」をメインにする

英語を「勉強」と思わせない

 まず、英語を遊びとして位置づけること。

 親の世代からすると、これが意外にいちばん難しいのかもしれません。うっかり「じゃあ今日も、英語の“お勉強”をやろっか?」などと言ってしまっていませんか?「英語=教科科目」という親の潜在的な思い込みが、子どもに伝染しないように気をつけましょう。

 また、子どもが間違えても、「正解/不正解」のフレームで判断しないこと。うまくできたときは褒めるというより、単純に「すごい!」と驚いてみせると、子どもはとても喜びます。

「appleはリンゴ」と子どもに教えるのは避けるべき

 気をつけてほしいことの2つめが、説明のために日本語をいちいち口に出さないということです。

「『おはよう』はグッドモーニング、『こんにちは』はハローだよ」という教え方は、まさに和文英訳に縛られた学校英語スタイルそのものです。もちろん、「dogはイヌ、catはネコだよ」という説明で十分なケースもありますが、原則としては「英語を英語のまま理解させる」ことを意識しましょう。

 その結果、「ママ、『キリン』と『giraffe』って一緒かなあ?」と子どもが“自分で気づく”のが理想です。この発見プロセスによって、子どもの地頭はどんどんよくなっていくからです。

「文字からではなく音から」が原則

 そして最後が、「音と映像」。勉強イメージがある親御さんほど、子どもと英語をはじめるようになると、文字の書かれた本やテキストを買い込みがち。

 第二言語習得においては「文字からではなく音から」「部品(文法・単語)からではなく、状況(映像・絵)から」が原則です。

早期教育の流れは加速している

 2歳くらいになると、子どもは言葉を話しはじめます。早い子だと1歳のころから言葉を覚える子もいますし、まだ話せないにしても、大人たちの会話を聞いていて、何を言っているのかは意外とよくわかっている、なんていうこともありますね。

 その時期が終わると、だんだんと単語を覚えはじめ、母親を見れば「ママ」、お腹が空けば「まんま」、自動車は「ブーブー」というように、目で見たものの名前を口に出すようになります。

「どうせ英語を習わせるのなら、日本語を覚えはじめるタイミングで、英語も一緒に覚えさせるのはダメなんですか?

 そんな疑問を持つ方もいるかもしれません。現に、わが子を乳幼児向けの英語クラスに通わせている方もいるでしょう。それどころか最近では、妊娠中に英語を聞かせる胎教英語もあるらしく、早期教育の流れはどんどん加速しています。

 妊娠中や0~2歳の段階での語学教育については、ここで是非を論じるつもりはありません。ただし僕には、そこまでの早期教育が必要だと断言する自信はありません。

3歳ごろから好き嫌いの感情が芽生える

 3歳くらいの時期からは、子どもにも少しずつ好き嫌いが芽生えてきます。ものごころがつくのは、3歳よりももう少し後でしょうが、この段階で子どもはかなりはっきりと好みを言うようになります。

 電車のことで頭のなかがいっぱいな子、動物に興味を持つ子、身体を動かすのが大好きな子、ままごとが上手な子……というように、子どもごとの興味・関心がおぼろげながらも見えてくるのです。

子どもの「何かにのめり込む力」はかけがえのない財産

 繰り返しになりますが、ここでいちばん大切なのは、英語が「好き」「楽しい」という感覚を持ってもらうこと。そのため、「英語が好き」のとっかかりになるものが形成されてからのほうが、取り組みの効果は出やすくなります。それを考えると、2歳は少し早すぎるかなというのが僕の実感です。

 子どもの「好き」には無限のパワーがあります。誰に強制されるでもなく、びっくりするような集中力でテレビ画面を眺めていたり、絵本を丸暗記したりということがよくありますよね?

 とにかくこの時期は「好き」を起点にすることを意識してみてください。何かにのめり込む力は一生モノの宝です。「好き」をとことん追求させることを優先し、英語はそのおまけ程度に考えればいいと思います。

(本稿は、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』より一部を抜粋・編集したものです)