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なぜ、今やNYは「起業家にフレンドリーな街」なのか? ニューヨークに根ざしたスタートアップ・アクセラレーター、ERAのディレクターに聞く

岡本彰彦 [Recruit Strategic Partners, Inc. 代表]
【第3回】 2012年12月11日
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MA そうだ。それからたとえば、君たちがプレゼンイベントを東京でやるべきじゃないかな。僕たちは英語でやるが、君たちは日本語で。それも1ヵ月に一度くらい頻繁に。そうすれば起業家たちは、「このままではダメだ、会社を始めたい。そうだこのイベントに行って、サポートを頼もう。ここに行けばほかの起業家に会えるし、投資家も見つけられる」となる。

 また投資家たちはイベントに来て、「スタートアップを見つけたい」と思うだろう。実現すれば、そのイベントはきっと日本のスタートアップの中心的な存在になるよ。

岡本 日本には起業したい若者は多いが、アメリカのスタートアップのように2年やそこらで急激に成長して数億ドルもの評価額になるのは難しい。アメリカでは成長スピードが速い。そうなるには何が必要なのか。

MA いや、日本は国内市場が大きいから有利だと思うよ。ヨーロッパでは、トルコがイスラエル同様、中規模の市場で、トルコには2つのタイプのスタートアップがある。ひとつは国内向けの1000万から2000万ドルくらいの評価額の小さなもの。もうひとつはグローバル市場に向けたもので、もっと価値は高い。日本は興味深いね。日本では国内向けの会社だって大きく成長できるし、グローバルに成長もできる。たとえばあのソーシャルネットワークはなんといったっけ?

岡本 ミクシィ?

MA そうミクシィだ。もしミクシィがグローバルに展開したら、もっと成長するだろう。僕の妻はミクシィが好きなんだ(編集部註:Muratのパートナーは日本人)。フェイスブックと違ってよりプライベートな感じだから。世界の他の人々だってフェイスブックではなくミクシィが好きだと思うよ。だが一方で、トルコで大きな問題になっているのは、誰がスタートアップを買収するのか、ということだ。買い手がいないんだよ。トルコには大企業は3つしかなく、彼らは買収できても、ほかにはないんだ。

岡本 日本には大企業はたくさんある。

MA だから僕は、日本の大企業がもっと企業を買収するなら、スタートアップの売却も増えて、評価額も上がっていくだろうと思う。

 もしそうした売却の実績がなにもなければ、僕が投資家だったら「このスタートアップは1億ドルの価値がある」と言われても、「ノ—」と言うだろう。だって、投資しても売却先がないんだからね。つまり僕が言えることは2つだ。

 日本のスタートアップは、(1)グローバルに展開すること。(2)もっと売却の実績をつくらなければならない、ということ。君のほうがそのへんは僕より詳しいと思うけど。

岡本 あなたの言うように、買収の実績は日本では少ない。だからスタートアップは株式公開するか、利益を上げるしかない。私たちは日本の大企業に、もっと積極的にスタートアップを買収したり、ただ買収するのではなく、それによって異なる企業文化を融合させて、自らイノベーションのジレンマを破壊できるような体質を築くよう呼びかけたい。

MA まったくそのとおりだ! 収益モデルのある大企業は、お金はあるが、変化することができない。だから革新のためには彼らは新しいチームを買収するべきなんだ。僕はリクルートがいい例だと思うよ。リクルートはIndeed.comを買収した。アメリカでチームを雇うんじゃなくてね。カルチャーをつくるために新しいウェブサイトを持つより、ただ会社を買うほうがずっといい。

 大きな国内市場とグローバルなテクノロジーゆえ、日本のスタートアップには大きな可能性があると思う。よいアイデアをもち、有能でよいパートナーがいる日本人は、会社を興すべきだ。それこそが未来をつくるから。それに起業は楽しいからね。

 また僕は起業家は日本経済を救うと思う。多くの変化を起こせるよ。そして日本の大企業には、スタートアップをたくさん買収することの利益に気付いてほしい。そうすることで彼らは市場を拡大できるし、新たな市場を獲得できるのだから。僕はすべての大企業がスタートアップの初期段階に投資するファンドをもつべきだと思う。多くの企業に10~20万ドルくらいを投資するようなファンドをね。

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岡本彰彦
[Recruit Strategic Partners, Inc. 代表]

株式会社リクルートの投資会社であるリクルートストラテジックパートナーズの代表取締役として、コーポレートベンチャーキャピタルファンドを活用し、日本のみならず、北米、東南アジアをはじめとしたグローバルな投資·事業開発活動を推進する。現職就任以前は、銀行、ベンチャーキャピタル、証券会社などでストラクチャード·ファイナンスや新事業開発に従事した後、2007年にリクルートに入社し、主に同社住宅カンパニーにおける事業開発の責任者とブランドマネジャーを担当。

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