「職場の雰囲気が悪い」「上下関係がうまくいかない」「チームの生産性が上がらない」。こうした組織の人間関係の問題を、心理学、脳科学、集団力学など世界最先端の研究で解き明かした本が『武器としての組織心理学』だ。著者は、福知山脱線事故直後のJR西日本や経営破綻直後のJALをはじめ、数多くの組織調査を現場で実施してきた立命館大学の山浦一保教授。20年以上におよぶ研究活動にもとづき、組織に蔓延する「妬み」「温度差」「不満」「権力」「不信感」といったネガティブな感情を解き明かした画期的な1冊である。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

武器としての組織心理学Photo: Adobe Stock

熱心な人ほど不満を感じる

 実は、不満にはパラドックスが存在します。

 それは、仕事に熱心に取り組むほど、人はやりがいを感じる一方で、同時に、もやもやした感情も湧き上がりやすくなることです。

 上司に対して不満を感じたとき、そしてその不満が積もっているほど、部下たちの主体性が目覚めているということも多いのです。

 これは不満が潜在的に持っているポジティブな側面です。

「なんで、こうなんだろう……」「もう少し……だったらいいのに」と解消しきれないものが体の中に籠もるのです。

 このような不満を抱くのは、その人が組織に対して関心を寄せているからです。

 分析的な思考が促され、改善への期待を抱き続けているのです。