不満の取り扱い方にリーダーシップの差が出る

 上司にしてみれば、部下の不満を目の当たりにしたくはないかもしれませんが、部下の不満は、「実はそうだったのか」と組織の課題を知り、業務の実情や部下に関する新たな気づきを得る機会になります。

 部下たちのエネルギーが不満に注がれたのであれば、上司はすみやかにそれに対処し活かす必要があります。

 彼らは、そんなに大げさなことを希望し、要求したいわけではありません。

 ほんの少しだけでもいいから自分の働きを認めてもらい、自分が組織にわずかでも貢献できていること、上司に要求が聞き届けられたことがわかれば報われたような気持ちになってまたやっていけるのです。

 人は、自分の大切なもの、社会的に価値あるものを他者に与えたときに幸せを感じる生き物であるようです。しかも、自らそうしたいと望んだとき、幸福感を味わうことができるのです。

 不満が小さいうちこそ、上司は部下を知り現場を知ることができますし、効果的な対処が可能になります。

不満が出ること自体は「悪いこと」ではない

 ここまでの話で見てきたように、不満とは、その人が物事に真剣に取り組むからこそ生じるもので、私たちを主体的に考えさせ、行動するように仕向ける機能を持つものと捉えることができます。

 こう考えると、むしろ健全な組織であればそこに葛藤はつきもので、歓迎すべきものだと考えた方がよくなります。

 葛藤そのものが悪いのではなく、その取り扱い方が問題になるということです。

 では、部下たちから生じてしまった不満という、一見ネガティブな事象をどうやってポジティブな組織運営に転換させていくか。その転換させる部分が鍵を握ります。

上司の耳には現場の不満が届かない2つのワケ

 ここで整理しておきます。そもそも仕事上の不満(とりわけ改善要求やネガティブな情報)について、部下がなぜ上司に直接話しに行かないのかと言えば、それはリスクがあるからです。

・自分に対する上司の覚えが悪くなる
・「じゃあ、君が策を具体的に練ってみてくれ」と、新たな仕事が振られたりする

 といったリスクです。

 つまり、これらのリスクを引き受けてでも、モノを言おうとさせる条件を整えていく必要があります。

(本稿は、『武器としての組織心理学』から抜粋・編集したものです。)