優秀なリーダーは「経営理念」を役立てる
組織のパーパスは、このように「個人のゴール」に落とし込まれないかぎり、それ自体としては無価値である。
たとえば、経営者がどれほど真剣に未来像を追い求めて、「これこそが当社の存在意義だ」と言えるようなパーパスを生み出したところで、それが経営者自身や会社のメンバーによって体現されていないなら、そのパーパスはやはり「絵に描いた餅」であり、どこまでも単なる「お題目」でしかない。
企業のパーパスが「生きたもの」になるには、各メンバーがそれを「自分ごと化」していくプロセスが不可欠なのだ。
パーパスの自分ごと化は、リーダーの抱える最も大きな仕事の1つだ。
とはいえ、いきなりチームや組織に所属するメンバーをつかまえて、「パーパスを自分ごととしてとらえよう!」と呼びかけたところで、それが功を奏することはないだろう。
チームを自然に生まれ変わらせるリーダーシップ実装には、大きく2つのフェーズがある。
フェーズ① リーダーがゴールを発見し、それに対するセルフ・エフィカシーを高める
フェーズ② チーム内のメンバーにゴールを設定し、それに対するエフィカシーを高める
まず大切なのは、リーダーであるあなた自身が「パーパスの自分ごと化」の範となることだ。
自分自身の「真のWant to」を「組織のパーパス」と結びつけるとはどういうことなのかをみずから体現し、個人のゴールに向かって動くことの魅力を、メンバーに示してみせる必要がある。
このとき必要なのが、やはり「Have toを捨てる」ことである。
リーダー当人がHave toでがんじがらめになっているようでは、メンバーに「パーパスの自分ごと化」を促すことなどとてもできないからだ。
自分のタスクで身動きが取れないリーダーに、「きみ自身がやりたいことは?」「会社のパーパスと重なる部分は?」などと問われても、部下はまともに答える気にはならないだろう。
これではメンバーの内部モデルも書き換わらないので、当然ながら行動変容も望めない。