大企業も注目! サウナはもはや健康インフラ
――この本はエビデンスが豊富ですよね。書籍には参考文献が46も記載されています。サウナの健康効果は、もう科学的に証明されているのでしょうか?
加藤:2013年以降にエビデンスがどんどん出てきたので、そのおかげで、なんとなく気持ちいいとか、疲れが取れると感じていたことを、科学的に証明できるようになってきました。
――どうして2013年以降にエビデンスが出てきたんですか?
加藤:サウナ大国であるフィンランドには、健康習慣をモニタリングするようなシステムがあるんですね。で、1960年からずっとデータを取り続けていたんですけど、それが2013年にまとまって、一気にデータが増えたんです。
健康データって、ちゃんとしたものを取るのはすごく大変なんですよね。お金も、期間も。若いうちからずっと健康習慣をやり続けて、どんな病気になって、どんな病気にならなかったかって、薬のように白黒はっきり出るものではないので、ちょっとしか効果がないものをたくさんの人口ベースで集積していくってことなので。よほど国をあげて取り組まないとできません。
ところが、フィンランドの場合は、旧ソ連から独立した時に非常によくなかったヘルスケアを何とかしなければいけないという社会情勢があり、国をあげてヘルスケアに取り組んだという背景があるので、膨大なデータを集めて分析することができたんです。
――サウナには、ちょっと、おじさんの娯楽のようなイメージがありましたが、れっきとした健康インフラなんですね。
加藤:実はこの本を出してから、セミナーの依頼も増えました。つい先日も、経団連とかJALとか三井物産とか。
――大企業がサウナに注目しているということですか?
加藤:社員の健康管理をけっこう気にしてるんじゃないですかね。メンタルダウンとか、社員のパフォーマンス維持のために、「サウナと健康」をテーマに講演してくださいという依頼は多いですよ。世の中がサウナを見る目は、明らかに変わってきていますね。だから「サウナは体に悪いのでは?」と思っている方も、正しい入り方さえすればサウナは非常に健康効果が高いものなので、ぜひ楽しく、気持ちよく、ととのっていただきたいです。
慶應義塾大学医学部特任助教・日本サウナ学会代表理事
群馬県富岡市出身。北海道大学医学部医学科を経て、同大学院(病理学分野専攻)で医学博士号取得(テーマは脳腫瘍)。北海道大学医学部特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部附属病院腫瘍センターにてすい臓癌研究に従事。帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターや北斗病院など複数の病院に勤務。専門はすい臓がんを中心にした癌全般と神経変性疾患の病理診断。
また、病理学、生理学にも詳しく、人間が健康で幸せに生きるためには、健康習慣による「予防」が最高の手段だということに気づき、サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新の科学で解析することを第二の専門としている。サウナを科学し発信していく団体「日本サウナ学会」を友人医師、サウナ仲間と作り、代表理事として活動中。『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社刊)が初めての著書となる。