ダイナミック・プライシングは誰のためか
さて、利益の平準化のためと、人流を分散させるための変動価格は意味合いが違うだろうが、前述の「Go Toトラベル」の平日重視策はどうも中途半端だ。
そもそも、観光地は土日に客が押し寄せることを前提にビジネスを組んでいる。うっかり平日に出かけたら、現地のレジャー施設の定休日に当たりかねない。飲食店もそうだ。365日休まず営業せよと言われても困るし、働き方改革の観点からもまずいだろう。平日に出かける場合は、自分が行きたい観光施設やお目当ての飲食店の定休日を確認して、旅行プランを立てる必要がある。受け入れ側だって、客がたくさん集まる休日にクーポンを使ってくれる方がうれしいはずだ。そもそも、家族旅行なら子どもの学校事情だってあるだろう。
だから、今回のGo Toの計画は誰も幸せにならない「変動制」に見えて仕方がない。
もし、国や企業が消費をもっと促したいなら、お金持ちの優遇に見える手法より、庶民がトクするような手法を取った方がいいのではないか。高速道路には「休日割引」があるが、これはたくさん高速道路を使ってくださいという考え方だ。もしGo Toトラベルが平日を優遇するなら、観光地側が「うちは独自に上乗せして、週末限定クーポンを出します」と言えば、さらにお客を増やせるだろう。
北風と太陽ではないが、人がその気になりやすい時にこそメリットを多く付与すれば、より財布が緩みやすくなるはずだ。こうした逆ダイナミック・プライシングもありではないか。
なお、JR東日本・西日本は2022年春から新幹線グリーン車・グランクラスの料金を値上げする。お金に余裕がある人からしっかり払ってもらおうということのようで、こちらのほうが庶民も納得できると思うが、いかがだろう。