実力以上の結果を出し、人より抜きん出た存在になるには、努力と能力だけでは足りない。周囲の人の認識を自分の味方にし、だれから見ても魅力的な人物になる力「EDGE」(エッジ)を手にすることで、思いどおりの人生を歩むことができる。全米が大注目するハーバードビジネススクール教授、待望の書『ハーバードの人の心をつかむ力』から特別に一部を公開する。

「失敗を活かせる人、活かせない人」決定的な差Photo: Adobe Stock

あえて犯罪歴をアピールした理由

 世間はときに非情なものだ。そしてデイヴ・ダールのような人なら、「人生のセカンドチャンスをつかんだからこそ、自分はエッジを獲得した」と言うだろう。(「エッジ」の関連記事:ハーバードで教える「成功する人、しない人」決定的な差

 デイヴは薬物乱用、強盗、暴行の罪を犯し、15年間も、刑務所を出たり入ったりして過ごした。その結果、「人生の落伍者の前科者」というレッテルを貼られるようになった。

 しかし、彼のアイデンティティーには、そんなレッテルとはそぐわない部分があった。彼の話によれば、すでに子どもの頃、自分にはパンづくりの才能があることを自覚していたという。そこで、ある日、彼は思いたった。この才能を利用して自分を救済してみようじゃないか、と。栄養満点で、オーガニックで、シードやナッツをたっぷり入れた雑穀パンを焼いて、時間をかけて自分を立て直していこう、と。

 だが1つ、問題があった。自分のポニーテールのヘアスタイル、しわがれ声、身のこなしといったものを目にすると、相手がおそれをなすことがわかっていたのだ。おそらく、パン製造会社を起こすのも一筋縄ではいかないだろう。彼の場合、犯罪から足を洗ったという経歴は、まったくアピールポイントにならなかったのだ。

 だが、それなら、ほかの方法をとればいい―自分の失敗を認め、これまでたどってきた道のりをみずから公表しようそう考えたデイヴは〈デイヴズ・キラー・ブレッド〉という会社を立ちあげると、自分の経歴を反映した企業理念を打ちだした。

〈デイヴズ・キラー・ブレッド〉で、私は「セカンドチャンス雇用」のパワーを目の当たりにしてきました。だからこそ、犯罪歴があるものの、人生を立て直したいと考えている人材を、弊社は積極的に雇用しています。「セカンドチャンス雇用」によって、社員は生計を立てるだけではなく、人生をやりなおすセカンドチャンスを得ているのです。雇用機会がなければ、前科がある人たちは自分が唯一知っている生活―罪を犯す人生―に戻るしかない。それが現状です。私たちはこの現状を変えたいのです。

 デイヴは投資家だけでなく小売店や顧客にも、自分のこれまでの道のりこそがセカンドチャンスの重要性を証明していることを明確に伝えた。前科があることを強みに変え、立ちなおるだけのガッツの持ち主であることをアピールしたのだ統計によれば、とてつもない成功をおさめた人の75%は、問題の多い家庭の出身であるそうだつまり、セカンドチャンスで成功をつかんだのである

 人生におけるさまざまな苦労は、相手を誘導する際に利用できるこれまでどんな失敗をして、どのようにそこから立ちなおったのかを、あっけらかんと説明してみよう。「いまになってみれば、いい経験でした」「たくさんのことを学びました」というように。すると、どんな失敗も一時のあやまちになる―成功へと続く道の通過点にすぎなくなるのだ。

(本原稿は『ハーバードの人の心をつかむ力』〔ローラ・ファン著、栗木さつき訳〕から抜粋、編集したものです)