ライフスタイルにあわせて住居を変えていく人が、
これから増えていく

日下部 皆さん長生きするようになったので、子育てを終えたご夫婦が2人に戻ってからの生活がより注目されていますね。マンションからマンションへの買い替え。駅から離れたマンションから駅近のマンションに買い替え。そういうのが出てくるかなと。

牧野 そうやってどんどん動いていくというのは、中古も含めて、マーケットにとってはとてもいいことですね。僕は新築マンションマーケットって、最近、あまり興味が無くなっています。むしろそうやってどんどん回していくとか、いろいろなタイプの住宅を、人々がそれぞれの好みや趣味嗜好や投資を含めて選択していく。これが一番、不動産マーケット的には成熟した、こなれたいいマーケットになるような気がしています。

日下部 ただ、国土交通省がおこなっている5年に1度のマンション総合調査によると「分譲マンション居住者の62.8%が永住志向」という統計があるんですよね。

牧野 デベロッパーも永住って言って宣伝し過ぎたような気がしています。不動産業界の立場からすると、動かさないとお金が落ちないので儲からないという構造がありますが、それだけでなく自治体問題もあるんですよ。マンションを1回買ったきりで永住してしまうと、この中でただ単に高齢化していくだけになってしまう。活性化しないんです。

日下部 永住志向は、シニア層のほうが強いと思います。新たなローンが組めない、賃貸が借りにくい、退職金が思ったほど無かったなど。あと、日本人的な感覚で、住み慣れたところでずっと暮らしたいという想いもありますね。

牧野 でも、高齢者の方達の住宅を覗くと、無駄になっていることが多いです。子どもが出ていって部屋が使い切れていない。特に戸建の場合、広いと維持・管理も大変ですよね。

日下部 確かにマンションでも「二つの若い」は深刻な問題です。そこで、いろいろな住宅を使いこなすということですよね。

牧野 そうです。欧米では、割と住み替えるじゃないですか。特にアメリカ人は、すごく住み替えています。あれはきわめて合理的で、そのときの家族のサイズだとか、自分の生き方だとか、仕事の内容だとか、それらに応じてどんどん居住を変えていく。日本でも、こうした方が増えてくると思います。

つづく