総選挙が告示され、選挙戦に突入した。政党が乱立しているため、全政党を公平に、しかも全政策を取り上げるのは困難ではあるが、本コラムの趣旨に添い、金融経済政策だけに絞って主な論点を整理しておきたい。(以下、みんなの党は「みんな」、日本未来の党は「未来」、日本維新の会は「維新」と表記)

デフレ脱却花盛りの金融政策

 民主・自民・維新・公明・みんな・新党改革に共通しているのが、デフレの脱却を大きな目標に据え、程度の差はあれ、日銀との連携を強化するという方向性である。デフレの脱却は、そのまま円安への誘導にも繋がることは言うまでもない。

 1%か2%かといった数値に差はあるが、これら各党はインフレ目標を掲げている。しかし、そのようなインフレ率は、これまでの経験値から言って、決して容易な目標ではない。そのため、自民党は、日銀法の改正を視野に入れ、建設国債の大規模買い入れの要請、官民協調外債ファンドの創設にまで踏み込んで提言をしている。安倍総裁は、一時の過激な発言はトーンダウンさせたものの、「日銀に建設国債を全部買わせる」など、日銀による財政ファイナンスをイメージさせる言葉まで使っている(日銀による国債引き受けと紙一重である)。

 しかし、日銀がどんなに国債の買いオペをしたとしても、民間企業や個人に資金が流れない限りは、銀行の日銀当座預金が増加するだけであって、インフレにはならない。それは過去10年で証明されていることでもある。

 仮にインフレに誘導したいのであれば、王道は、民間企業や個人の投資や消費を喚起することによって、需給ギャップを埋めるしかないのだが、その手法について各党に大きな違いがあり、やり方次第では劇薬になりかねないものさえある。安倍総裁は否定に転じたが、仮にも日銀が国債を引き受けるようなことがあり、それが何らかの手段で民間企業や個人にばら撒かれれば、確実にインフレになるだろう。