新生銀の迷走とスルガ銀の“離婚協議”、銀行業界「二大騒乱」の行く末Photo:Diamond,123RF

2021年の銀行業界の「二大騒乱」といえば、SBIホールディングスの新生銀行に対する株式公開買い付けと、スルガ銀行の筆頭株主との“離婚協議”だ。その行く末を追う。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

工藤英之・新生銀行社長へ非難の声
「敵前逃亡もいいところだ」

「思い起こせば、あおぞら銀行との合併が破談した2010年から、金融庁は新生銀行の経営に疑念を抱いていた」(新生銀幹部)

 21年12月、SBIホールディングス(HD)の新生銀に対する株式公開買い付け(TOB)が成立し、新生銀はSBIHDの連結子会社になった。同年9月にSBIHDが仕掛け、邦銀初の敵対的TOBとなった今回の騒乱は、SBIHDの“勝利”でいったん終結を迎えたことになる。

 SBIHDのTOBを巡っては、10月に新生銀が「反対」の意見を表明。11月に臨時株主総会を開催し、買収防衛策として掲げていた対抗措置の発動について株主に賛否を諮る予定だった。

 ところが新生銀は臨時株主総会の前日になって突如、反対意見を「中立」へと変更する。それに伴い、対抗措置も不要になったとして臨時株主総会の中止も発表した。

「新生銀としては独立社外取締役協議会を設置し、少数株主の利益を最大化するという観点から、どういうTOBがいいか議論してきた。もともとTOBを受け入れる前提の議論をしており、SBIHDと会社対会社の戦いをしようとしていたわけではない」

 工藤英之・新生銀社長は今回のTOBの「前提」についてそう説明したが、新生銀社内からは「敵前逃亡もいいところだ」と非難する声が絶えない。というのも、工藤社長が挙げた翻意の理由が釈然としないからだ。