人は挑戦することでしか
成長できない
秋元氏は、最初から起業家を目指していたわけではない。どちらかと言えば、就活に関しては安定志向だった。実家は相模原で農家を営んでいたが、「農家は継がなくていい、安定した職業についたほうがいい」と親に言われて育った。証券会社など安定した金融業界で働きたいと考え、慶應義塾大学理工学部で金融工学を学んだ。第一志望は東京証券取引所だった。
ところが友人に誘われて行ったDeNAの会社説明会で、考えが大きく変わった。
「創業者の南場智子さんが、“人は挑戦することでしか成長できない、DeNAでは入社1年目から、成功確率50%くらいの仕事を任せていく”と話していて、それに感動したのです。年功序列の安定だけが人生の正解ではない。ここでなら自分が成長できると思ったのです」
DeNAでは、ウェブサービスのディレクターや新規事業の立ち上げなど、4つの事業領域を担当し、必死に仕事に打ち込む日々を送った。だが3年がたったとき、与えられた場所では頑張れたが、「本当にやりたいこと」を仕事にできていないことに気がついた。
そもそも「本当にやりたいこと」とは何か? その頃、農業を廃業した実家の荒れ果てた畑を見て、どうしてこうなってしまったんだろうと思い立ち、一次産業に貢献する事業をやりたいという気持ちが芽生えた。
「生産者の方に会って話を聞くうち、農家に生まれてIT企業で仕事を学んだ自分にしかできないことがある、後継者に悩む一次産業に貢献できることがあるのではと思ったのです」