永住思考から、住まいをどんどん変えていく時代へ

定年後に東京・八王子の賃貸戸建てで大成功! 不動産ビジネスの新潮流とは?日下部理絵(くさかべ・りえ)
住宅ジャーナリスト、マンショントレンド評論家
第1回マンション管理士・管理業務主任者試験に合格。不動産総合コンサルタント事務所「オフィス・日下部」代表。管理組合の相談や顧問業務、数多くの調査から既存マンションの実態に精通する。また、新築マンション情報など、マンショントレンドにも見識が深い。各種メディア、講演会・セミナーで活躍中。主な著書に、『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』(ダイヤモンド社)、『「負動産」マンションを「富動産」に変えるプロ技』(小学館)、『マンション管理・修繕・建替え大全 2021』(朝日新聞出版)ほか多数。

日下部 永住思考の背景には、日本人の価値観とか、ご高齢であるとか、住宅ローンだとか、いろいろな問題がありそうですよね。賃貸にしても、理想的な物件がなかなか借りられず致し方なくそこで、みたいなこともあるでしょうし。今、永住思考が強い人というのは、どちらかと言うと動きたいけど動けない人が多いのかな……。

牧野 今の60代・70代の方だと、なかなか身動きがとれないというのはあるでしょうね。ただ、30代・40代の人たちの考え方って、もうすでに随分変わってきていると思っています。賃貸と組み合わせるとか、自分で所有するにしても2箇所に分散しながら住むとか、積極的に買い替えていくとか。永住思考の価値観は、世代間でギャップがありそうです。

 賃貸、所有にかかわらず一人で2軒、3軒の家を使いこなして、それぞれのシチュエーションで魅力的な物件をみんながエンジョイするようになってくると、空き家問題の解消にもつながりますし、不動産マーケット的にも伸び筋になるのかなと思います。

日下部 今の若い人たちだと、マンションからマンションへ移るのは全然普通にすることだし。アクティブなシニアの方だと、戸建てから駅前のマンションに買い替える方もいますね。

牧野 そうですね。

日下部 もちろんお金の問題もあるので、シニアの方は退職金も動きのきっかけになっている感じがします。

牧野 まったく、その通りだと思います。退職金を使って次の人生をどう歩もうかと考えると思うので、きっかけのひとつにすごくなりそうですね。子育てをするには、今の家が良かったかもしれないけど、定年退職を契機に都心のマンションでもいいし、自分が一番好むエリアに引っ越していくという。まあ、この動きはもうすでに始まっていますよね。

日下部 若い人でも、永住ではなく売却などの出口を見越した半投半住(半分投資で半分住居)を意識されている方もいますし、コロナがきっかけで、これまで思いもしなかった東京・八王子市の奥の方などにパッと動いた方もいますね。

牧野 八王子市といえば、僕の知り合いで八王子へ移住して大成功した人がいますよ。