血圧,大腸がんPhoto:PIXTA

 高血圧を指摘されると脳・心血管疾患が心配だが、大腸がんも気にした方がいい。

 東京大学医学部附属病院・循環器内科の金子英弘氏らは、健診情報や診療明細情報のデータベース(JMDC)に蓄積される医療情報を利用し、血圧と大腸がんとの関係を解析した。

 対象は2005年1月~18年5月の間に集積されたデータおよそ250万人分で、20歳未満、すでに降圧剤を飲んでいる人や大腸がんの既往、直腸ポリープの既往例などを除外し、最終的に222万112人(平均年齢は44.1歳、男性が58.4%)のデータを解析している。

 血圧値は米国の分類基準に従い「正常血圧:120/80mmHg未満(以下単位を省略)」「高値血圧:120~129/80以上」「ステージ1高血圧:130~139/80~89」「ステージ2高血圧:140/90以上」で判定。追跡開始時の割合は、正常血圧52.4%、高値血圧15.8%、ステージ1高血圧が21.0%、ステージ2高血圧は11.2%だった。

 平均3年の追跡期間中、6899人が大腸がんと診断された。血圧との関係をみると、追跡開始時の血圧値が高いグループほど大腸がんリスクが有意に高かった。

 さらに、肥満や喫煙、不健康な食習慣など大腸がんリスク因子の影響を調整して解析すると、ステージ2の高血圧は、大腸がんリスクを単独で有意に上昇させることが判明した。血圧の上昇につれて大腸がんリスクも増え、上の血圧が10上昇するごとに大腸がんリスクも6%増加する。

 また、男性がステージ1の高血圧でも大腸がんリスクがはっきりと上昇したのに対し、女性では関連が認められなかった。どうやら男性の方が血圧の影響を受けやすいようだ。

 最新のがん統計によると、大腸がんは男性で3番目、女性では2番目に多い。ただ、早期発見がかなえば完治が期待できる。

 せっかく血圧値という目に見える「警告」があるのだから、血圧が高めの方は、意識的に大腸がん検診の便潜血検査を受けよう。特に男性は要注意である。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)