特集『健康診断のホント』(全18回)の#6はさまざまな俗説が飛び交う「がん対策法」を取り上げる。がんと食事、酒、たばこの関係は、エビデンスに照らすと本当はどんなことがいえるのか。小社刊『最高のがん治療』が好評発売中の津川友介・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授に聞いた。(ライター 奥田由意)
【食事】
「これで治った」は×
がんを治す食品はない
「これを食べたらがんが治った」。テレビや雑誌でよく目にするキャッチコピーである。
まず初めに知っておくべきことは、現在のところ、がんを治すと科学的に証明された食品や食事法はないということだ。津川友介氏は「食事でがんになるリスクを減らすことは可能ですが、いったんできたがんが食事で縮小したり、治ったりしたというエビデンスはありません」ときっぱり言う。
例えば、糖質制限はがんに効くといわれることがある。がんの栄養になる糖分を取らなければ、がんが縮小するという臆測からだ。だが、厳格な糖質制限が必要なケトジェニックダイエットは治療効果がないばかりか、逆にデメリットや副作用しかないことが確認されている。この他、オーガニックの野菜、果物などを中心に取るマクロビオティック、ビーガン、ベジタリアン療法、コーヒーかん腸を含むゲルソン療法など、がんに効くと喧伝されるさまざまな食事療法は、有効だという科学的根拠がない。標準治療に勝る治療はないのだ。特にコーヒーかん腸などはがんに対する治療効果がないばかりか、死亡例があるほど危険だ。