あいおいニッセイ同和の次期社長人事に、大東京出身者たちが安堵した理由

あいおいニッセイ同和損保の
次期社長に新納啓介氏が就任

 1月26日午後、損害保険大手のあいおいニッセイ同和損害保険の次期社長に、取締役常務執行役員の新納啓介(にいろ・けいすけ)氏が就任するという速報が駆け巡った。その報に接した、あいおいの主流派を占める大東京火災海上保険の出身者たちは、一様にほっと胸をなでおろしたことだろう。

 というのもその前日、あいおいにとって看過できない事態が起こっていたからだ。大手紙が、あいおいの親会社であるMS&ADインシュアランスグループホールディングスの原典之社長のインタビューに基づき、「2025年度までに同じホールディングス傘下の三井住友海上火災保険とあいおいの合併準備が整う見通しを明らかにした」と報じたのだ。

 この報道に対し、あいおいと三井住友海上の両社は色めき立ったが、とりわけ怒り心頭に発したのがあいおいであり、金杉恭三社長だったという。

 確かに、10年4月にあいおい損保とニッセイ同和損保、三井住友海上の3社が経営統合してMS&ADホールディングスが発足して以降(あいおい損保とニッセイ同和は10年10月に合併)、いずれあいおいと三井住友海上が合併するだろうという観測は常に取り沙汰される事案だ。

 だが、合併について両社の首脳陣は「選択肢の一つ」と慎重な姿勢を崩さない。ましてや、昨年5月のダイヤモンド・オンラインの保険特集「保険の裏 営業の闇」で行った金杉社長へのインタビューでは、「当面、合併はないですね。あいおいニッセイ同和の社長としてだけではなくて、MS&ADホールディングスの副会長としても、合併はないと申し上げます」と明確に否定してみせ、周囲を驚かせたほどだ(参照:あいおいニッセイ同和損保社長が語る、業界注目の「中核代理店」構想を進める理由――金杉恭三・あいおいニッセイ同和損害保険社長インタビュー)。

 というのも、あいおいが三井住友海上と合併すれば、得意先である大手企業は複数社購入が前提のため、両社のシェアは間違いなく落ちる。あいおいと関係の深いトヨタ自動車であってもしかりだ。また、これまで何度も合併を繰り返してきたあいおいでは、「社内に向けて莫大なエネルギーを投じなければならない統合作業はもう懲り懲りだ」と、複数の関係者が口を揃える。

 つまり、これらのデメリットを上回るメリットがなければ合併には踏み切れないないというわけだ。何より、損保ジャパンと経営統合した結果、10年を経て社名が完全に消え去った日本興亜損保の二の舞は何としても避けたいところだろう。

 そうした最中での新納氏の登板――。プリンスと称され、本命中の本命とされてきた人物だが、昨年の役員人事では次の次の社長との見方もあった。