米国ケンブリッジ市の最大の大家さんとは?

衰退するエリアを活性化し、街の付加価値を上げる不動産戦略とは?上田真路(うえた・まさみち)
建築家・不動産投資家 KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。現在5棟の超優良物件を保有。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。同社では鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。GSD不動産デザイン学科を卒業後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在は住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営。慶應義塾大学、早稲田大学で「不動産デザイン」について教えている。初の著書に『ハーバード式不動産投資術 資産26倍を可能にする世界最高峰のノウハウ』(ダイヤモンド社)がある。

上田 話が変わるんですけど、木下さんは高校生のときから、早稲田の商店街再興のためにいろいろ活躍されてたと思うんですけど、そのときには、たとえば大学と商店街とか、大学と地元の不動産の大家さんたちとの関係で、何か気がついたこととかってありましたか?

木下 いや、当時はまだそういう観点はあまりなかったですけど、ファシリティー(施設)として大学を使わせてもらうというのは、結構ありましたね。大学側からすると、大学のキャンパスって結構無駄な資産というとあれなんですけど、稼働率がすごい低い資産ですよね。夏休みとか冬休みとか春休みとかって、一年の半分ぐらいあの教室を使っていないわけで。そうするとそこが全然動いてないので、どう使おうかって話にようやくなったのが、僕が早稲田商店街にかかわってるときですね。九〇年代後半ぐらいです。

上田 そうだったのですね。

木下 たとえば、夏休みは大学の施設が空いているんだから、街と一緒になって何か企画をやっていくことが、大学のブランディングにも役立つよねと。街と連帯する大学みたいなブランディングを本当にやれるよねみたいなことに気づき始めたのが九〇年代後半です。それで環境まちづくりという文脈のなかで、大学と商店街が共同するようになったんです。

上田 なるほど。

木下 早稲田大学の場合なら、新宿のど真ん中にあれだけの大きいスペースを持ってるのだから、外の人にもっと活用してもらって、それで、大学自体のやっている研究とか、地域活動に対する協力みたいなことも大きく打ち出していこうというのを、当時の施設課長さんがすごい積極的な方だったのでやりました。当時で一〇〇年ぐらいの歴史のある早稲田大学としても、初めて商店街にキャンパスを貸したというので話題になりました。

上田 やっぱり米国型のキャンパスの作り方と日本型のキャンパスの作り方は、かなり違うなと思うんです。やっぱり米国の場合はエンダウメント(寄付金)がちゃんとあって、ハーバードとかも毎年の運用基金が約二兆円ほどあります。こちらを不動産や株、ファンドなどで運用して、その運用益で教育サービスやキャンパスの環境づくりにつかっているわけです。

木下 すごい大きいですね。

上田 それでキャピタルマネージメント部が、大家としてしっかり周りの土地を買ってドミトリー(学生寮)として学生に貸していくんです。あとは、先ほどおっしゃったとおり、キャンパスのなかの建物の活用のしかたなんかも、企業に一棟まるまる貸しながら、そこで産学連携をやっていくなんてこともやっています。

木下 進んでますね。

上田 ただし、これって言ってしまえば大家業なんで、まさにケンブリッジ市だと最大の大家さんがハーバードやMITなんですよね。なので、そういうった活用の仕方が積極的にできるというのが、ある意味では米国型の大学のあり方です。

木下 その通りですね。

上田 やっぱり日本はどうしても地権者がかなり多いので、キャンパスが街の中に埋め込まれてたとしても、なかなか積極的に大学が不動産投資をしていくとか、なかなかしづらいです。あと、日本ではお金に対して若干マイナスなイメージもありますので、教授たるもの、お金に触らないみたいなことが美徳みたいなところもあったりするので、なかなかむずかしいですね。

木下 そうですね。