大学を核としたコミュニティづくりという発想があれば…

上田 レジデンシャルエデュケーション(住まいと教育の一体化)という考え方がありますけれども、だったら民間のほうからもうちょっと大学に寄り添って、大学の周辺に住んでる人たち、この人たちも大学のステークホルダーなので、もっと大学を盛り上げたり、それから、地方から出てきた学生ですよね。彼らも大学と関係ないところに住むんじゃなくて、大学に近いコミュニティーのなかで住みながら、勉学の効果の最大化を狙う。教授たちは、またそこと出入りをしながら、研究の最大化を狙うということは結構、大事かなと思っています。

木下 そうですね。ちょうど九〇年代後半ぐらいって、やっぱり新宿のあそこの場所にあることもあって、不動産もそこそこ高いみたいなことで、結局マンションとかができても、ほとんどの場合、高すぎて学生なんかが住めるマンションじゃないんですね。ワンルームとかもできるんですけど、それでも結構高い。結局、みんな西武線とかに学生がどんどん流出していってしまう。

 僕らの時代はなかったですけど、昔は結構周囲に下宿とかもたくさんあって、それで田舎に帰るお金もないから、夏休みはずっと下宿にいて、地元の商店街の大学生のお兄ちゃんたちに遊んでもらったなんて、結構みんな言いますよね。

上田 なんか聞いたことはあります。

木下 だけど九〇年代にバブルもあって、不動産もガンと上がったタイミングぐらいから開発の方向性がだいぶ変わってしまいました。大学のキャンパスは早稲田が持っているけど、その周りの土地を全部持ってるわけでもないから、結局よくわからないペンシルビルが建ったりとか。住宅は、やれば売れるからみんな作るけれども、大学生が住むようなマンションじゃないほうが割がいいというので、そっちの方向に行ってしまった。

 結果、もともとある商店街の商業機能とは全然あわない客層になって、その転換をしなきゃいけないって焦っていましnえた。従来は学生向けの商売をやっていればよかったのが、早稲田が学生がいない街になっちゃったから、新しく移り住んだファミリー層を対象に、街の商売をやり替えていかないといけないというのが、僕が参加したときの早稲田の商店街の状況だったんです。

上田 そうでしたか。

木下 本来だったら学生が住める寮みたいなものがもうちょっとまわりにあって、そこに一定の人たちが住んで、学生向けの商売も成立するという環境が維持できれば良かったのかもしれないですけど。ただ、それは大学や商店街側の怠慢もあるのでなんとも言えないんですけど。

 学生は、大学には授業のあるときだけ来て、授業がないときには西武線とかに乗ってちょっと離れた家賃が手頃なところに住むと。なかなか地方出身の人で、新宿のど真ん中の早稲田に部屋を借りるというのは、相当お金がある人じゃないとできないですよね。そういうことを早稲田大学は考えないままに、なし崩しでそうなっちゃったというのが八〇年代、九〇年代なのかなと思いますね。

上田 そうですね。

つづく