アルバイトがロイヤルティーを高めるのに必要なものとは?
平賀充記(ひらが・あつのり)
1963年長崎県生まれ。同志社大学卒業後、1988年リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)に入社。「FromA」、「タウンワーク」、「とらばーゆ」、「ガテン」、「はたらいく」など、リクルートの主要求人メディアの編集長を経て、2012年リクルートジョブズのメディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2015年ツナグ働き方研究所を設立し、所長に就任。著書に『非正規って言うな!』(クロスメディア・マーケティング)『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)など。ツナグ働き方研究所オフィシャルサイト「ツナケン!」:https://tsuna-ken.com/
――コロナ禍で多くのアルバイトが雇止めにあいました。これからの働き方などにどんな変化が起こってくるでしょうか。
平賀 シフトを入れてもらえないという“隠れ雇止め”を含めると、相当な数になると思います。そういうのを目の当たりすると、1つの職場だけで働くのは大きなリスクと考えるようになり、2つとか3つの仕事を掛け持ちしたり、副業したりする。そういうマルチワークの時代になると思います。
アルバイトにとっては、複数の店を掛け持ちする中で、自分の中でメインとサブという意識が生まれてきます。
有本 時給がそんなに違わないんだったら、楽しい方を選びますよね。
平賀 店長の求心力が低く、スタッフの勤務先へのエンゲージメントが低いと、忙しい時間帯など、本当にシフトに入ってもらいたいときに人繰りがつかないという問題が出てくるのです。最近では、その対策として、スタッフの仕事を細分化し、この業務だけを単発のアルバイトにお願いしようという動きも出てきました。しかし、こういう働き方では、仕事のロイヤルティー(忠誠心)は上がらないんですよね。アルバイトがおカネ以外のモチベーションがないと、簡単にやめてしまいます。
――ロイヤルティーを高めるのに、何が必要でしょうか。
平賀 飲食店で働く人にとっては、極端な話、店長がすべてですからね。店長が尊敬できると感じると、若い人は「この店長のために頑張ろう」「このお店が好き」と、ロイヤルティーにもつながるのです。
見方を変えれば、店長の評価軸をスコア化することによって、店長のスキルを上げ、働く人のエンゲージメントを上げるということもできるのではないでしょうか。
有本 多くの会社で、店長任せの面がありますね。
平賀 そうなのですよね。各店舗にはその店舗のやり方があって、店長にそれが任されているのですが、その結果、なぜこの店でうまくいっているのか、あるいはうまくいっていないのかが分析されず、ブラックボックス化していることが多いのです。
有本 店長の役割は大きいですね。それともう一つ強調したいのが、働きがいです。私はその仕事で成長実感が得られるかどうかがカギであると考えています。自分が成長を実感できれば、この仕事で頑張ろうというモチベーションやお店へのロイヤルティにつながります。そのためには、正当に評価する仕組みが必要なのです。
ところが、多くの企業で、仕事を早く覚えてもらうという観点で「教育」には力を入れるのですが、「評価」には手が回っていないのです。
――「教育」と「評価」の両輪を回すことが大事だというわけですね。
有本 そうです。人の成長には、「基準を示す」→「教える」→「要求する」→「評価する」というグローイング・サイクル®が重要だと考えてます。「気合で頑張れ!」といった根性論では限界があります。スタッフに何を要求するのか、その内容を具体化したうえで、評価する。昇進にもその評価制度を反映させるのです。
平賀 今のように変化が激しいときには、有本さんがおっしゃる、教育と評価の両輪を回す、「グローイング・サイクル®」の仕組みはいいと思います。たとえば、売上減を補うために、ホールスタッフがデリバリーを行うことになったなどと、新しい仕事を覚える必要に迫られることがあります。そのときに、会社が教えっぱなしにするのではなく、それができているかを評価するという仕組みがあると、働いている人のスキルは自ずと上がりますし、そうすればモチベーションも上がるんじゃないでしょうか。