面接と印象が違う! 早期離脱につながるリアリティ・ショックを防ぐには?

アフターコロナで深刻化するサービス業の人手不足 今から準備しておく対策とは?有本均(ありもと・ひとし)
1956年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学1年からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年、日本マクドナルド株式会社に入社。店長、スーパーバイザー、統括マネージャーを歴任後、マクドナルドの教育責任者である「ハンバーガー大学」の学長に就任。2003年、株式会社ファーストリテイリングの柳井正会長(当時)に招かれ、ユニクロの教育責任者である「ユニクロ大学」部長に就任。その後、株式会社バーガーキング・ジャパン代表取締役を経て、2012年、株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立。

――店長の仕事がブラックボックス化しているというお話がありましたが、採用面についてはどう感じていますか。

平賀 アルバイトの採用もその店に任されているのが普通です。よく聞く話ですが、同じチェーン店でも、採用率が高く定着率も高いところもあれば、その逆もある。その背景の一つにいわれているのが、店長のトレーニング不足です。基本的な面接トレーニングの研修すら受けたことがないという人もいます。

有本 面接には簡単なチェックリストが用意されている程度、というのが一般的ですね。

平賀 店長が忙しいと、採用の面接は15分程度というのが多いですよね。勤務地の希望や働きたい時間帯、「ホールですか、キッチンですか」と職種を聞いて、「後ほど連絡します」で終わり。

 こうしていざ仕事が始まると、アルバイトが「思っていたのと違う」とリアリティ・ショックですぐに辞めていってしまうケースがかなりあります。面接のときに、店長が応募者の質問に丁寧に答えたり、もう少し丁寧に仕事のことを話していれば、リアリティ・ショックを防げたかもしれません。あるいは店長が「この店を選んでほしい」という思いを持って、仕事のやりがいなどを熱く語ることによって、アルバイトが「この店で働きたい」と感じ、メインの仕事にしたいと思ってくれるかもしれません。

 面接というプロセスをもっと重視すべきでしょう。

有本 飲食の場合、採用するにしてもしないにしても、応募者イコールお客様なんですよね。

平賀 そうそう。たいした質問をしないで不採用にした場合、お客様を一人失ったも同然です。応募者の適性などを見極める質問さえなかったとなると、「見た目で選んだのか」と不信感を与える可能性すらあります。

――せっかく応募してくれたアルバイトを早期離脱させない方法はありますか?

有本 一つの方法としては、オリエンテーションを2時間なり3時間なり、丁寧に行うことです。「自分にできそうにない」と思うとすぐに辞めてしまいますから。

 仕事を覚えた頃に、アルバイトが「ここで働くと自分が成長できる」と実感できるかどうかも、働き続けてくれるか、辞めてしまうかの分かれ目になるでしょう。

平賀 究極は、募集しなくても紹介でスタッフが集まるという店になることでしょうね。10店舗ぐらいある居酒屋チェーンがあるんですが、めちゃくちゃ働いている人がきびきびしていて、よくトレーニングされているのです。そこで、お客様のほうから「うちの息子を働かせたい」となるんです。これもある意味で紹介ですよね。

 一般的に紹介の場合、事前に店のことも知っており、紹介者からの期待を背負っていることもあり、リアリティ・ショックで辞めることが少ないのです。

有本 新入社員が職場になじむために、先輩社員の育成力も重要になってきています。当社も、先輩社員向けに、新入社員受け入れ支援プログラムを開発しました。ほめ方やしかり方、モチベーションの持たせ方などのコミュニケーションスキルや、育成者として必要な知識や考え方などを学んでもらおうというものです。

 人手不足だからこそ、一人前になるように育てる戦略が問われているのです。