サウナが大ブームとなっている昨今。北海道大学医学部の先輩・後輩の関係でもあり、ともにサウナと人体を知り尽くしたサウナ愛好家の医師2人による対談が、ついに実現!
「医者が教えるサウナの教科書」の著者・加藤容崇氏と、加藤氏の先輩で加藤氏をサウナの沼に引きずり込んだ形成外科医の塩谷隆太氏が、サウナはなぜ身体にいいのか、サウナが気持ちいいのはなぜなのか、を医学的に解説しながら、行き過ぎたサウナブームにも警鐘を鳴らす!
(写真 疋田千里 構成 井上敬子)
医師だから分かる「サウナでととのう理由」
――お二人は北大医学部の先輩・後輩とのことですが、塩谷先生のほうが早くサウナにハマられたんですね。
塩谷隆太氏(以下塩谷) 僕はもともと、子どものころからバスケットボールをやっていて、アスリートって練習の疲労回復目的で、よくサウナに入るんです。水風呂がメインなんですが。
加藤容崇氏(以下加藤) 水風呂メイン? その頃は「ととのう」目的じゃなく入っていたんですね。
塩谷 水風呂に入って筋肉を冷やし、冷えた体をお風呂で温め、サウナ入って……という自己流の温冷交代浴(水浴と温浴を交互に繰り返す)的な入り方ですね。
ところが、ある時、ととのえ親方こと松尾大さん(プロサウナ―)と知り合って、サウナ室と水風呂だけの往復ではなく、「休憩(外気浴)」というのが重要だと聞いて、やってみるととてもよかった。
加藤 サウナ室→水風呂→休憩(外気浴)のセットですね。
塩谷 医学的に言うと、サウナと水風呂だけの往復だと、筋肉疲労は取れますが、自律神経はずっと交感神経優位だから、神経的には疲れるんです。そこに、休憩(外気浴)を入れることで、副交感神経優位になる瞬間が訪れる。自分で体感して、理屈もしっくりきたんです。それから、もっとちゃんとサウナの研究をしたら面白いなと思い始めて。
――それで、日本サウナ学会を設立されたんですね。
塩谷 でも僕は外科医で臨床医なんで、研究は専門じゃない。それで一緒にやってくれる医者を探して、北大の後輩の加藤先生がちょうどハーバード大学から帰ってくるというので、僕がサウナ師匠こと秋山大輔さん(サウナプロデューサー)のラジオ番組に呼んだのが始まりです。最初は、けげんな目をしてましたよね(笑)。
加藤 はい、怪しい人たちだと思ってましたね(笑)。「ロウリュが~」とか、「ととのう」とか初めて聞く怪しげな会話がかわされていて。でもその後、サウナ―たちのレクチャーを受けながら本来の入り方でサウナに入ってみると、確かに身体の中で何かが起こっている気がする。それでちょっと興味をもって、まずはインターネットの記事を調べてみると、また、うさんくさい記事が山ほど出てきて、なんじゃこりゃと(笑)。
塩谷 健康ウェルネス系のサウナ記事は、インチキ記事がいっぱいありますからね。
加藤 Webの記事は怪しすぎて駄目だと思って、今度は、本格的に世界中の論文を読みあさりはじめたんですよ。1000本くらい論文読んだ時点で、サウナは思ってたより健康にいいと分かってきて、サウナに興味を持ち始めました。
それで、実際に自分もサウナに日常的に入るようになり、さらには実験もしたりして書いたのが「医者が教えるサウナの教科書」です。