サウナなら誰でも瞑想状態になれる
――本にはサウナの様々な心身への効果が載っていますが、先生方が最も「すごい」と思われる効果は何ですか?
塩谷 「サウナならでは」ということだと、血流や自律神経、脳内物質などのトータルな作用で、サウナに入ると誰でも「瞑想」に近い状態になれることですかね。マインドフルネスの専門家に聞くと、「瞑想」って最低3週間から4週間の訓練がいる結構難しいものなんです。でも、サウナなら、誰でも、正しいルールを守って入るだけで、瞑想に近い状態になれる。
加藤 マインドフルネスって「集中瞑想」といって、雑念を感じていない状態を指しますが、これは結構、才能も必要。サウナに入ると、血流が上がるように思うかもしれませんが、実は血流が上がるのは主に皮膚で、脳血流は下がることが報告されています。脳では血流と活動が正の相関を示すことが分かっているので、脳血流が下がると脳はごちゃごちゃ考えられなくなる。すると脳の消費エネルギーが減って休まるんですね。スマホも持ち込めなくて、他にやることもないので、自然と呼吸とか何かに集中せざるを得ず、余計、脳の雑念が減っていくんですよね。
塩谷 サウナ室→水風呂→休憩(外気浴)というセットだけで、瞑想状態になれるのはマインドフルネス研究の人たちからすると、すごいことのようですね。
加藤 現代人の脳は、みな過活動ですからね。サウナの直後って、頭がすっきりした感じになるでしょう。そこがお風呂との大きな違い。お風呂だと、ぼおっとしちゃうから。
塩谷 そう、お風呂だけだと、ちょっとだるくなりますよね。それは副交感神経優位のリラックスモードになるからですね。
加藤 サウナ→水風呂→休憩(外気浴)だからこそ、脳がすっきりする。多くの人が「ととのう」感覚として「浮遊感」をあげますが、脳の右側の頭頂部に身体感覚をつかさどる場所があって、実際にそこの脳波が変わっているんです。だから、ふわふわしているのは、実際に脳の感覚のファンクションが変わってる。気のせいじゃないんですよ。
塩谷 たまに、貧血の場合もありますよね。
加藤 くらくらしたり、たちくらみがするのは、鉄欠乏性貧血とか、神経調節性失神(自律神経の乱れで、脳への血流がうまく調整できなくなって起こる失神)の場合もあります。いつもと違うと感じたら、やめることも重要です。
――「ととのっている」時にひらめいた経験などはありますか?
加藤 僕はめちゃくちゃ、あります。ぼおっとしてるだけなのに、本職のがんの研究のこととか、突然、ひらめきます。例えば、いろいろ行き詰っていて、塩漬けにしていた問題の解決策などが、突然降ってくる。
塩谷 経営者のサウナ―は、みんな、そういいますよね。多分サウナは、突き詰めて考えるよりも発散型の思考に向いているんでしょうね。サウナで脳の血流が低下していたのが、水風呂でぎゅっと一時的に脳の血流が戻って。「サウナで考え、水風呂で決断する」という格言がありますよね。
加藤 そして「休憩中に忘れる」(笑)と。ととのって、どうでもよくなって(笑)。
塩谷 たぶん、脳内の交通渋滞が整理されるような感じですね。よく例えられるのはパソコンの再起動。普段、アプリとかが裏で動いてメモリをくっているのを、一回、落として強制再起動するイメージ。不要な雑念がなくなって、さくさく動くようになる。