食費節約は一人の担当ではないという「共感」が大事

 とはいえ「食費を減らすにはどうすれば?」という質問には、いつも同じ答えを返している。

 生活必需支出である食費はむやみに減らすべきでなく、今回のように値上げによって増える場合は予算そのものを上げることもやむなしだ。ただし、その前に「食費の透明化」もしておきたい。

 最新の国の家計調査報告(総務省統計局)によれば、コロナの影響がなかった2019年と比較すると、2021年で食事代は27%、飲酒代は76.7%減っており、チューハイやカクテルの購入は約40%増加している。外飲みが減り、その分家飲みが増えたために、食費に含まれる酒類の購入が増えたということになる。酒は、果たして食費に入れていいのかという疑問があるが、酒類販売のカクヤスが行ったインターネット調査では、6割の人が酒は「食費」と答え、「娯楽費」と答えた人の約3倍もいたという。

 では、月に使う酒代はいくらかといえば、だいたい1万円がボリュームゾーンとなっている。家庭によっても異なるだろうが、先に書いた「10円の値上げで月1500円増える」どころの金額ではない。

 しかも、外飲みが減っている現状で「付き合い費」が減っているなら、交際費あるいは飲む人の財布から一部でも賄うほうが理にかなう。

 飲む人の財布から徴収しましょうと書くと面白く思わない人もいるだろう。自分の小遣いを減らされるように感じるかもしれない。しかし、ここで大事なのは、節約そのものより「一緒に努力している」という共感精神を示すことなのだ。

 多くの家庭では、主婦が日々のやりくりを担い、その範囲で買い物をし、献立を考え、毎日違うメニューを調理している。これは実に大変な作業だ。先日も、「大容量スーパーで買い物したほうが節約になるからと家族は言うが、買ってきた後は全部自分にお任せ。その後の労力をまるで知らない。節約のために自分はくたくたになる」という不満の声を聞いた。

 もちろん、家族に悪気はないだろう。その後の家事を手伝ってくれれば理想だが、それが苦手というなら、せめて飲み代くらいは小遣いから出して、節約に参加しているという姿勢を示してあげてほしい。値上げラッシュの中、食費やりくりを誰か一人の責任にするのではなく、その大変さに共感すること、そして自分にできる方法で参加すること。共感と共有がない節約は長続きしない。