ロシアのプーチン大統領ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派が支配している地域の独立を一方的に承認した上で、ロシア軍の派遣を指示 Photo by Kremlin Press Service/Handout/Anadolu Agency via Getty Images

ウクライナ情勢が一触即発だ。ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派が支配している地域の独立を一方的に承認した上で、ロシア軍の派遣を指示した。これから何が起き、世界経済はどう動くのか。ダイヤモンド・オンラインの人気記事を基に、今後を読み解く。ウクライナ情勢の理解には、ここで紹介した記事が手引きになるだろう。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

ロシア侵攻はあるか、株価、為替、
ウクライナ危機の今後を読み解く!

 ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派が支配している地域の独立を一方的に承認した上で、「平和維持」を名目に現地にロシア軍の派遣を指示した。

 目下の山場は24日に開催予定の米ロ外相会談だ。ここでの協議の行く末が、今後の情勢を大きく左右すると目されている。

 なぜ、ウクライナ危機が起きたのか。これから世界経済はどう動くのか。ダイヤモンド・オンラインで読まれた人気記事の中から、今後の展開を探っていこう。

 まず、ロシアの専門家たちはどう見ているのか。

 ロシア政治研究の第一者である下斗米伸夫・神奈川大学特別招聘教授/法政大学名誉教授は、ウクライナを舞台に米国とロシアによる核管理とヨーロッパの安全保障を含めた国際秩序の作り直しが始まっているとみる。『ウクライナ緊迫、ロシア研究の第一人者が「軍事侵攻は起こり得る」と考える理由』

 2021年10月末、プーチン大統領と世界のロシア専門家との会合(バンダイ会議)に参加した下斗米教授は、会合のテーマは今後の米ロ関係を含むロシアと欧米の最悪の関係をどうリセットするかだったと振り返った上で、「ロシアにとってはウクライナのNATO加盟問題は安全保障上の死活問題だ。外交交渉を優先すると思うが、局面によっては、軍事侵攻は戦術的にはあり得る」と指摘する。

 下斗米教授が警戒するのは、周辺諸国の動向だ。「ウクライナについても中国やトルコも関与しないとも限らず、局面によっては軍事侵攻するような事態もプーチン大統領は想定していると思う」と述べた上で、「ウクライナのNATO加盟について20年間のモラトリアム期間を置く」ことが現実的な“落としどころ”だとみる。『ウクライナは中国、トルコも絡む「多極ゲーム」?ロシア研究の第一人者が考える“現実解”』

 今後の米ロ交渉の行方を解説するのは、ロシア外交安全保障政策などを専門とする畔蒜泰助・笹川平和財団主任研究員の『ウクライナ「3つのシナリオ」、プーチンの新たな“危機創出”も』の記事だ。畔蒜氏は米ロ交渉の有力な3つのシナリオを披露した上で、「ベラルーシなどへの中・短距離ミサイルの配備や中国との軍事協力の拡大などを選択する可能性が高い」と分析する。

 また、ウクライナ危機に至った過去の背景については、『かつての兄弟国がなぜ戦闘状態に?ウクライナ紛争の背景を読む』が分かりやすく解説している。

 ロシアがウクライナに侵攻した場合の経済への影響を知りたいならば『もしもロシアとウクライナが戦争に突入したら?世界経済の混乱を徹底解説』が必読だ。記事では天然ガスや鉱山資源など価格上昇への懸念に加え、半導体不足の深刻化に警鐘を鳴らす。

 というのも、半導体製造に用いられる「希ガス」の一つである「ネオン」はロシアとウクライナでその多くが生産されており、ロシアが報復措置として希ガスの輸出を制限すれば、半導体不足に拍車がかかるからだ。

 為替はどう動くか。14年3月のロシアによるクリミア併合時には、ウクライナ・フリブナは10%超の大幅安となった一方、ロシア・ルーブルは3%程度の下落にとどまった。

 今回、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切る場合、クリミア併合時と同様にフリブナへの下落圧力が強まる一方で、ルーブルは欧米による対露経済制裁が意識され、クリミア併合時よりも下落幅が大きくなるリスクがある。『ウクライナ「ロシア侵攻」のルーブル安リスク、ドル円相場の反応は?』

 一方、これまで有事の際には「リスクオフの円買い」が進んでいた。ところが足元では円は小幅な値動きにとどまっている。『ウクライナ緊迫も「リスクオフの円買い」進まず、市場が“日本回避”する理由』の記事では、円高に進まない背景や、投資家が日本株を避ける理由が描かれている。

 ウクライナ情勢に対する中国のスタンスがよく分かるのが『ウクライナ危機に慎重な中国が、「台湾有事」に向けて密かに張る“伏線”の正体』だ。

 記事では、中国が公には基本的な立場表明だけにとどめており、慎重に事態を静観する理由を解説。迫りくる「台湾有事」に向けて中国が伏線を張っていると国際コラムニストの加藤嘉一氏は分析する。

 それでは日本政府はどう対応していくのか。岸田文雄首相は22日、「一連のロシアの行為はウクライナの主権を侵害するもので認めることはできず、強く非難する。今後の展開を注視し、G7をはじめとする国際社会と連携し、制裁を含む対応を調整していく」と報道陣に述べた。

 とはいえ、日本政府の動きは心もとない。『制裁検討のロシアに謎の経済協力…「チグハグ岸田外交」で日本有事は大丈夫か』の記事では、林芳正外相が15日にロシアとの「貿易経済政府間委員会」に出席して批判を浴びたことや、岸田首相の“受け身”の姿勢を問題視。中国による台湾侵攻を含めた「日本有事」が起きた際に、国際社会の理解を得られないと指摘する。

 ダイヤモンド・オンラインでは、引き続き、ウクライナ情勢を巡る専門家の記事をお届けする。ぜひ参考にしてほしい。