腸内細菌を維持しつつ、日本食で認知症を予防写真はイメージです Photo:PIXTA

 認知症患者の腸内細菌には変化が生じている。注目されるのは、ヒトの腸内細菌の2~4割を占め、「日和見菌」といわれるバクテロイデス菌だ。

 国立長寿医療研究センターの研究グループが60~80代の128人(平均年齢74歳)を、認知症群(34人)と非認知症群(94人)に分け腸内細菌の分布を調べたところ、バクテロイデス菌が全体の3割以上を占める人は、非認知症群で45%と半数近くだが、認知症群では15%のみだった。バクテロイデス菌の占有率が高い場合、認知症リスクが10分の1程度に低下する可能性があるわけだ。

 そのほか、アルツハイマー型認知症の腸内では、ビフィズス菌の割合が小さい、便として排せつされる細菌の代謝物に偏りがあるなど、認知症と腸内細菌の関係を示す証拠が集まりつつある。

 先月、同じグループから、日本食スコアの3タイプ、(1)JDI9(米、みそ、魚介類、緑黄色野菜、海藻類、漬物、緑茶、牛肉・豚肉、コーヒー)、(2)JJDI12(〈1〉+大豆・大豆製品、果物、キノコ類)、(3)JDI12改訂版(コーヒーの有益性を一段あげた評価スコア)と、認知機能および、腸内細菌との関係を調べた成果が報告された。

 対象者は同センター病院のもの忘れセンター外来を受診した85例で、平均年齢74.6歳、女性が6割を占めた。このうち23人が認知症、42人が軽度認知障害と診断されている。

 認知症vs非認知症を解析すると、非認知症の人は魚介類、キノコ類、大豆・大豆製品、そしてコーヒーをより多く摂取していることが判明した。逆に認知症の人は非認知症の人よりも、三つのJDIスコア全てで点数が低く、特にJDI12改訂版では、明確な差がついた。一方、バクテロイデス菌との明確な関係は示されなかったが、日本食の遵守で一部の細菌代謝物濃度が低下することが判明している。

 元々、食卓でおなじみのキノコ類や大豆製品は、腸内細菌のバランス維持に役立つことが知られている。地中海食だ、糖質制限だと頑張らずとも、意外にいつもの定食+食後のコーヒーが認知症予防の最適解なのかもしれない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)