大学時代、リモートで働いたり勉強したりしていたシャノン・チンさん(22)は現在、家族とカナダのトロント近郊に滞在しながら、リモートで2つの仕事を掛け持ちしている。ユーザー体験の仕事の方は、契約後1年半近くたった昨年12月まで同僚と顔を合わせる機会がなく、実のところ、彼らの顔を全く見たことがなかった。
「私たちは会議でカメラを切っていた。だからどんな顔をしているのかさえ知らなかった」
もう一方のソーシャルメディア関係の仕事では、「同僚の誰にも会ったことがない。ただの一人も」と彼女は言う。
オフィスで一度も働いたことがない若い従業員が増えつつある。彼らは新型コロナウイルス禍のさなかに卒業し、オフィスが閉鎖され始めた頃に就職した。そして彼らの多く――特に、大体1997年以降に生まれた「Z世代」――は、リモートワークが多くの企業で当たり前になるなか、この先もオフィスに出勤しないのではないかと想像している。
彼らはそのことにおおむね満足している。多くがリモート勤務を気に入り、この働き方を続けることを望んでいる。だが難点もある。調査によると、若いリモート従業員は、同時に疎外感や不安を抱えている。オフィスで働く機会を失い、前の世代では当然と思われた伝統的な経験を得られないことで、将来の私生活や職業生活に有害な影響があるかもしれないと研究者は主張する。年上の同僚から学び、上司と雑談し、オフィスでの勤務時間のリズムに慣れ、さらには単に他人と顔を合わせる機会がない。これは新しい領域であり、若い従業員に及ぼす影響は長期化する可能性がある。