高い志を持ち働く中国人女性は多いが、ないがしろにされる人権

 確かに中国の男性も勤勉だ。前述の統計資料によると、中国の男性労働参加率は世界で最も高い80%グループに入っている。同グループのその他のメンバーはブラジル、フィリピン、インドなどである。

 しかし、中国の女性労働参加率は68%に達している。フランスの男性労働参加率が62%であることを考えると、中国人女性はフランス人男性よりも働き者だということになる。インドの男性は中国男性に劣らず労働参加率が80%に達しているが、女性労働参加率はわずか28%にすぎなかった。

 中国女性の努力と犠牲があったからこそ、中国の労働参加率がインドを引き離しアジア一の座を手に入れることができたと言えよう。

 ちなみに、オーストラリアやニュージーランドの女性労働参加率は60%、アメリカは58%、フランスは51%、日本は48%である。

 比較的新しいデータもある。北京師範大学労働力市場センターが作成した『2016中国労働力市場発展報告』によると、中国の女性労働参加率は約64%で、世界平均(50.3%)を大きく上回っているという。

 ただ、中国では、自国の男女労働参加率と女性労働参加率の高さに対して、「労働生産性が低いだけのことだ」「効率が悪い結果だ」といった批判も出ている。同時に、仕事と家庭の両立問題に悩む女性が多いという指摘も結構ある。

 中国の男性、特に南方の男性は比較的家事を手伝うというイメージがあるが、「家事の全部は女性がやる」(20%)、「家事の大半は女性がやる」(42%)という実際の統計を見ると、中国女性の大変さと努力に頭が下がる。蔡昉・元中国社会科学院副院長も「中国女性の家事に使う労働時間は男性の2.6倍で、世界的に見ても、(その負担が)高い水準にある」と指摘している。こんな大変な状況のなかでも、、「事業と家庭」を両立させようとする中国女性が70%もいる。

 ニューヨークには、女性問題専門家のシルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Hewlett)氏が率いるセンター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー(Center for Work-life Policy、略してCWLP)という非営利シンクタンクがあった。同センターの調査によれば、職場ではトップの座を追い求めたいと高い目標を持つ中国女性は76%もいる。対して、米国女性では52%にすぎない。両者間にあるその差を考えると、中国女性がいかに大志(または野心)を持っているかがわかる。ちなみに、センター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシーは現在、センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI)と改名されている。

 しかし、これだけ勤勉で、高い教育を受けた比率も高い中国女性だが、中国の一部の地域においては、いまだに人身売買、誘拐といった犯罪の対象にされている。基本的な人権も守られていない絶望的生存状態から解放されていないのだ。

 国際女性デーを記念することは、経済では世界2位の大国になったいまの中国でも、大きな意義を持っている。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)