中高一貫校「千代田国際」の初年度入学生74人が期待を寄せる“新しい教育”とは“新しい教育”の学校に生まれ変わるため、教員も急速に変わろうとしている。教員向けワークショップの様子 写真提供:武蔵野大学附属千代田高等学院

失敗を恐れずPBLを押し進める

――朝7時には校門に立っているそうですが、パワフルですね。

日野田 立ち番が好きなんですよ(笑)。朝、生徒の顔を見たら元気なのか分かりますし。教室を回るのも好きですし、掃除も大好きです。

――かつての千代田さんは、議論の好きな学校で、職員会議をずっとやっていて、なかなか決まらないような印象がありました。日野田先生が来られてから、だいぶ変わったのでは。

日野田 うやむやにならないよう、落としどころを決めるようにしています。7割満足、3割不満が基本だと思います。そこをパワープレーの、多数決の論理でやってしまうと、遺恨が生じますから。

 こちらに来たときには、ジョークの1つもでませんでした。腹を割って話そうと、ワークショップもやりました。学生時代に何をやってきたのかとか、得意なことはとか話していたら、いろいろな発見がお互いにありました。この2年間で、議論ができるようになってきたのが良かったかなと思っています。

 分からないことは分からないでいいので、そう言って、分かる人と一緒にやってくれれば評価しています。僕は、マウンティングするような人はダメな人だと思いますので。先生というのは、ちょっとアホなくらいがちょうどいいと思っています。

――こういうときに関西弁はいいですね(笑)。それを言い続けることで、教員文化も変わってきたと思います。

日野田 僕はひつこいんで(笑)。

――ところで、PBLの授業には先生方もまだ慣れていないから、お互いに実験みたいなところがあるでしょう。

日野田 そうですね。一昨日も職員会議の代わりに、「PBLの授業を皆で考えよう」という会をやりました。すごい量のアイデアが出てきて、「どっからやろう」と、いま盛り上がっています。

――どんどんやりなさいよと、失敗してもいいよ、という感じでないとやりにくいですよね。

日野田 地理と家庭科が一緒になって、世界を回って料理をつくろうというのもいいですし、家庭科は理科とも一緒にいろいろできそうです。英語と数学とは経験済だそうです。

――英語の授業は具体的にはどのようにしていきますか。

日野田 英語は3つに分けて展開しようと考えています。特に上位の10人くらいは、普通の英語の授業ではなく完全にTOEFL仕様に変えて、SAT(大学進学適性試験)対策しようかなと思います。普通のクラスではちゃんと力をつけるようにしよう、少なくとも高1までには英検の2級が取れるようにと考えています。

――理数系はいかがでしょう。

日野田 面白い先生もいるので、数学のPBLをしていこうと。僕が日本に帰ってきて一番驚いたのが、どこで使うのか分からん問題をいきなり「解け」と言われたことでした。それはやめた方がいい。

 基本的に日本の数学の授業は重い。PBLですと、理由を説明する時間がなくなってしまうかもしれない。だからこれから生徒には、「困っていることは困っていると言ってね」と話していきます。