10年連続増配!
NTTの有言実行の株主還元方針

 成長するEPSを実現するうえでは、必然的に自社株買いは不可欠な手段となる。株主還元については、大きく2つの方針をNTTは表明している(*1)。

◆配当政策
・継続的な増配の実施を基本的な考えとする
◆自己株式の取得
・機動的に実施し、資本効率の向上を図る

 増配を続けながら自己株式の取得を機動的に実施するという表現は、一般的によく見られる株主還元の方針ではあるが、NTTが有言実行であるか否かを検証してみよう(図表3)。

競争の激しい通信業界で、NTTの株価が10年連続で安定成長している理由とは?図表3 日本電信電話の配当額、配当性向、自己株式取得

 配当は2011年度から10期連続の安定した増配を続けている。配当性向も直近年度は40%前後で推移しており、多くの日本企業が目標として掲げる30%と比較しても一段高い水準にある。

 一方、業績や財務状況を鑑みながら機動的に実施するのが自社株買いであり、グラフが示すように、毎年の金額には相応のブレは存在するが、継続的に実施していることが観察できる。

 2020年3月期には過去10年間で最大となる約5000億円(約1億株)を市場および政府から取得し、累計取得額は約4兆円を超えた。2020年当時の発行済株式数約19.5億株(2020年1月の株式分割前)の5%に相当するものであり、EPS成長に大きく寄与している。

 取得した自己株式は定期的に消却を実施し、消却累計数は、過去10年間で発行済株式数の約30%に達している。2021年3月期末における期末発行済株式数(自己株式を含む)39億株に対する期末自己株式数2億7800万株は、7%強に留まっている。