今、私たちがすべきこと

 新型コロナウイルス感染時の合併症として「嗅覚障害」が認められるのは周知の事実ですが、このようにウイルスが脳のにおいを取り扱う組織自体に影響を与える特性から、嗅覚障害が起きている可能性があります。また、記憶や認知機能に関連した組織への影響も認知症などへの影響含め、非常に気になるところです。

 そして、入院となった被験者を除いても同様の傾向が認められたとのこと。要するに軽症者に関してもこのような脳細胞への影響が引き起こされる可能性はあるわけです。

 過去にも、新型コロナウイルスが脳をはじめとした「中枢神経系」に存在することが発見されたという報告はありましたが、今回紹介した論文のように、より具体的にウイルスが脳に与える影響の実態が解明されてきています。

 一般的な関心事としては、こういった脳への影響が「一過性」なのか「長期的」に続くのかという話だと思われます。しかしその点に関しては、中長期視点での今後の研究が待たれますので、現段階で過度な心配は禁物です。

 とはいえ、依然として新型コロナウイルスに感染することで脳に関係する様々な影響が認められる可能性は否定できません。

 特に中高年にとって脳にまつわる病気で最も一般的なのが認知症です。「他者とのコミュニケーションを定期的にとる」「しっかり運動をする」といった認知症予防はより意識しておくに越したことはないでしょう。

 また新型コロナウイルスは血管に影響を与える可能性(※2)も示唆されており、「脳の血管」を守るという意味でも、日々の生活習慣は整えておきたいものです。

【出典】
※1 Gwenaëlle Douaud,et al. SARS-CoV-2 is associated with changes in brain structure in UK Biobank. Nature. 2022 Mar 7.
※2 Yan Xie,et al. Long-term cardiovascular outcomes of COVID-19. Nat Med. 2022 Feb 7.