バラモン教の教え

 ガンジス川のほとりでは、ブルジョワジーが使用人を使って牛に鋤を引かせて田畑を耕し、大いに財産を増やしていました。

 牛は彼らにとって大切なトラクターです。

 そこにバラモンがやってきて、牛を連れていってしまいます。

 これからお祭りをやるから牛を焼いて、神様に供養するのだという。

 よく働く牛なんですよ、殺さないでください、などとお願いしても叱られるだけです。

「神様がおまえの牛を欲しておられる。おまえは神様に反抗するのか?」

 バラモン教の教えでは、人は死後、煙とともに空中に舞い上がり、祖霊の世界に達すると信じられていました。

 そのせいでしょうか。

 バラモンたちは儀式や祭典があると、必ずといっていいほど大量の生贄(いけにえ)を捧げます。

 特に牛を焼きます。

 もちろん捧げるのは匂いと煙だけで、肉はバラモンたちが食べるのですが。

 繰り返される牛の調達に、ブルジョワジーたちは頭にきていました。

 でも、神様に反抗するのかと問われると反論の余地がなかったのです。

 そこに登場してきたのが、ブッダとマハーヴィーラでした。

 ブッダは「無益な殺生はするな」と教えていました。

 マハーヴィーラの創始したジャイナ教は、もっと過激な考え方で、無条件のアヒンサー(不殺生)を主張していました。

 この2人の教えにブルジョワジーたちは飛びつきます。

 バラモンが畑にやってきて、「牛を持ってくぞ」といっても拒否すればいい。拒絶する理屈ができたのです。