「半導体不況は必ずやってくる!」深刻な不足が続く中でも識者が断言する理由Photo:PIXTA

昨年から続く半導体不足が、さまざまな業界のサプライチェーンに影響を及ぼしている。なぜ半導体不足はこれほど深刻な状況に陥ったのか。その背景には、業界が抱える構造的な問題がある。また、旺盛な需要を前に、半導体特有の好不況の波を繰り返す「シリコンサイクル」が消滅するのではないかという見方もあるが、それは「あり得ない」と筆者は考える。その理由とは。(グロスバーグ代表 大山 聡)

長引く「半導体不足」を引き起こした
複雑な要因と今後の行方

 世界半導体市場統計(WSTS)によれば、2021年の世界半導体市場は前年比26.2%増の5559億ドル(1ドル115円換算で約64兆円)であった。WSTSでは2022年の市場成長率を同8.8%増と予測しているが、半導体不足の問題は解消されておらず、旺盛な需要が継続していることを考えると、成長率はこれを上回る可能性が高い。

 この状況下で世界の半導体大手メーカー各社は積極的な設備投資を続けているが、この先市場はどうなるのか。不足問題はいつ頃解消されるのか。筆者の見解を述べさせていただきたい。

 半導体不足が社会問題として大きく取り上げられたのは21年の初頭からで、特に自動車業界における半導体不足が注目されたことがきっかけだった。20年初頭から新型コロナウイルスの感染が広がり始め、世界中の産業や経済活動が混乱したことに端を発している。

 コロナ禍で自動車の生産台数は大きく減少し、その後20年後半から需要が急回復した。クルマに限らず、コロナ禍の混乱はさまざまな機器の生産活動に影響を及ぼした。その結果、用途が広く、納期の長い半導体の供給がボトルネックとなったのである。

 半導体と一言で言っても、さまざまな種類がある。簡単に主要な製品について説明すると、一般にパソコンやスマホなど、情報処理を行う機器における搭載比率が高いのが、メモリやロジックと呼ばれる半導体だ。一方で、クルマや産業機器など機械制御的な動きが中心となる機器ではマイコン、アナログ、ディスクリートの搭載比率が高くなる傾向がある。

 昨今の半導体不足はメモリ以外の多くの製品分野で発生しているが、特に問題視されているのはマイコン、アナログ、ディスクリート分野における不足である。このうちマイコンとディスクリートにはそれぞれ特殊な事情が存在する。