目標設定と管理は、全社員が向かうべき方向性を定めるための「V2MOM」というフレームワークを使って行われる。これはVision(ビジョン)、Values(価値)、Methods(メソッド)、Obstacles(障害)、Measures(基準)の頭文字を取ったもの。全社・各部門のV2MOMを経営陣や各リーダーが作成し、それを基に議論を重ねながら、現場の社員一人一人のV2MOMが設定されていく。

 その過程においては、経営陣がつくった目標に対して誰でも改善案などの意見を言える場が設けられている。また全社のV2MOMは、米国本社の共同CEOから世界中の現地法人の一般社員に至るまで、あらゆる関係者が参照できるようになっている。

 評価については、社員全員に対して実施される「従業員サーベイ」という調査の結果も、驚くほどオープンにされている。一部の情報は伏せられているものの、3人以上の部下がいるマネジャーの評価は、社内のどこからでも参照できるようになっている。

 目標や評価が全て透明化されて公平感がある一方で、常に周囲に見られているという緊張感もあるため、それが社員の自覚を生み、成長を促す側面もあるのだろう。

カスタマーサクセスを重視
新卒向けの研修は約650時間も

「カスタマーサクセス」の重視を体現するのが、充実した社員の研修制度だ。前述のようにサブスクモデルのビジネスでは、常に顧客価値の最大化を考えて行動しなければならない。そのため、特に新卒で入社する新入社員については、配属先部門にかかわらず、セールスフォースの文化、製品知識や顧客対応スキルに関する研修が、入社後約4ヵ月間、約650時間、165プログラムにもわたって密に行われるという。

 中途社員の研修時間については、これに加えて立ち上がり期間向けのプログラムもあり、役割や対象顧客セグメントに応じて、20〜150時間の追加研修が用意されている(2021年春の実績)。

 一方でエンプロイーサクセス部では、ビジネススクールやプロフェッショナル認定講座など、社員がスキルアップを目的に行う研修に、一定限度を設けて教育費の補助をしてくれる制度を運営している。また、社内の英語研修などをオンラインで受講したり、社内有志たちが率先して業務や製品に関するレクチャーを実施しているという。