「ウィキペディア」的発想が
Web3への理解を進める?

 Web3は、その呼び名で損しているところもあるのではないかと思います。なぜ「ウェブ」と名乗ったのか、私としてはこれはややミスリーディングであり、この名称のせいで無用な混乱と対立を招いているように感じます。Web3の概念やサービスは、いわゆるワールドワイドウェブの仕組みとは必ずしも関係がありませんし、1.0、2.0、3.0というバージョンのような呼称も、「新しいものの方が良いもの」「古いものはなくなっていく」という印象を与えますが、技術的には共存しうるものです。

 Web3の考え方が合うと言われるものは、特定の、巨大な組織化していくようなものとは逆で、個人が特定の目的で集まり、貢献していくことでインセンティブを得られるという、草の根的な部分を大切にするようなところがあると思います。典型例としては、先ほど挙げた、ファンビジネスなどもそれに当たるでしょう。

 私もまだ、“金の匂い”のようなものがする場面では、Web3を敬遠してしまう部分があります。しかし、そういう“金の匂い”はしばしば、多くの人がまだ理解していないマイクロトレンドがメガトレンド化するときの推進力となってきたことも事実です。

 従来の社会では「課題があり、それを解決する」、あるいは極めて巨大な組織化を目指すことこそが、ビジネスとされています。グーグルもアマゾンも、世界中で10万人単位で社員を抱えることにより、大きなことを成し遂げようとしてきました。

 しかしWeb3の考え方は、それらとは全く違っています。どちらかと言えばウェブ上の百科事典「ウィキペディア」的な考え方に近く、そうした世界観が理解できなければ、Web3についても理解できない部分が出てくるのかもしれません。

(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)