国家間紛争に備えて
企業はどう対応すべきか

 まず、今回のウクライナ情勢からも見て取れるように、国家間紛争という政治リスクにおいては、(1)情勢悪化のシグナルを見逃さず、(2)事態の深刻さをいち早く察知し、(3)早急に行動を取ること――が極めて重要となる。

 今年に入ってのウクライナ情勢は、時間が経過するとともに問題の質が変化してきた。

 最初は邦人、駐在員(帯同家族)をどのタイミングで退避させるかという危機管理の問題のイメージが強かったが、ロシアの侵攻が迫り、その影響が広がっていくにつれ、空爆による被害や避難民の増加などといういわゆる戦争・紛争の問題が色濃くなっていった。

 そして、この段階まで来ると国際線旅客機の発着が大きく制限を受け、電車やバスなど公共交通機関もまひし、外国へ避難することが難しくなることは想像に難くなく、邦人、駐在員の安全が直接的に脅かされることになる。

 ウクライナに滞在する邦人、駐在員にも日本の本社から派遣された人、現地の人と結婚して家族がいる人など立場や環境は多岐にわたり、全員が速やかに避難できるわけではない。

 しかし、外務省や現地大使館・領事館から発信される安全情報を基本にしながらも、安全保障や地域研究の専門家による見解、情報分析的な新聞記事、米国シンクタンクなどから発信されるブリーフィングリポートなども参考にして情勢の先読みを強化し、外務省が危険レベルを上げる前に一足早く退避対策を検討、実施することも重要だろう。

 特に、事態が深刻化すれば避難が難しくなる国家間紛争の場合はなおさらである。