「部下が残業するのは幹部の責任」。徹底された組織運営の秘密

自衛隊で痛感!「優秀な人が育たない組織」と「育つ組織」の決定的なちがいPhoto: Adobe Stock

──でも、運動神経が低い人を卒業レベルまで引き上げるのはけっこう大変じゃないかなと思います。自衛隊の教官の方たちは、どのように教育をされているのでしょうか

ぱやぱやくん:やっぱり、常に誰かが「厳しい鬼」の役をやっている、というのが大きいと思います。

 自衛隊には必ず「鬼教官」がいますが、それは新隊員や幹部候補生に「自衛隊としての規律・心構え」を教える必要があるからこそ。緊張感を持たせるために「鬼」の役割を担っているにすぎないんです。

 新隊員や幹部候補生が手を抜いていたりしたら、それが怪我や事故につながる場合もあるので、ビシッと厳しい態度で接しなければならない場面もあるんです。

 自衛隊も厳しい人をあえて教官に選ぶわけではなく、勤務態度がよく、ある程度人柄がいい人を教官に選ぶ場合が多いので、本当は優しいけど、仕事のために鬼教官を演じている、という人も多かったですね。

わび:それは私も経験があります。幹部候補生学校にいたとき、めちゃくちゃ厳しい鬼教官がいて。「もう二度と会いたくない」と思うくらいだったんですが、その3、4年後、その人が私の上司になったんです。

「うわー、最悪だ!」と思っていたんですが、再会してすぐに「俺があんなに厳しい指導をしていたのは、みんなに言わないでくれ」って言われて。

ぱやぱやくん:それはおもしろい(笑)。

わび:その人のもとでしばらく働いていましたが、仕事ぶりが本当に丁寧で、優しくて、人柄もよくて。ああ、やっぱり組織のために鬼教官を演じていたんだなあ、と。

ぱやぱやくん:鬼ごっこですよね。やっぱり、組織を引き締める役割って大変だけど、絶対に必要なんです。誰かが鬼の役をやらなきゃいけない。

 だから、任命されたらしっかり「鬼」になりきって指導する。自分が「鬼」をやったあとは、自分が育てた幹部自衛官が次の「鬼」をやっていたりする。もちろん、中にはパワハラをしてくる本物の鬼もまれにいますけどね。

わび:自衛隊には基本的に、「部下が残業するのは幹部の責任」「部下の仕事をコントロールするのは上司の仕事」というスタンスがあります。

 だからこそ、一人ひとりができるようになるまでしっかりと育てる。

 もちろん、中には途中で挫折して辞めてしまう人もいますが、全国各地からさまざまな人が集まった組織でもこれほど効率的に業務を遂行できているのは、そのスタンスがあるからこそじゃないかなと。

 誰も見捨てず、幹部として動けるようになるまで教育する、という成熟した組織運営の在り方は、ぜひ多くの方に知ってもらいたいですね。