十分な報酬をもらえる仕事に就いたものの、何の役にも立っていないことに傷つき、苦しんでいる。しかしどうしたらいいのかわからない。本書は、そんな人達の問題を言語化してくれる。ブルシット・ジョブに違和感を覚える人たちに「自分だけじゃないんだ」という安心感を与えてくれる一冊だ。(Keisuke Yasuda)

本書の要点

(1)ブルシット・ジョブ(BSJ)は、完璧に無意味・不必要・有害な仕事を意味し、それを行う人の精神を傷つける。
(2)BSJは取り巻き・脅し屋・尻ぬぐい・書類穴埋め人・タスクマスターの5つに分類される。
(3)ネオリベラリズムが促進する資本主義の競争社会や、搾取された富が不当に分配される「封建制」がBSJを増殖させる。
(4)人間が労働から解放された、BSJの無い社会を想像してみよう。

要約本文

◆人間の精神を傷つける「ブルシット・ジョブ」
◇「ブルシット・ジョブ」とはなにか

 いまの世界には、まったく無意味で有害ですらある仕事、しかもそれを行っている当人すらそう感じている「ブルシット・ジョブ」(BSJ)が増殖している。

 2013年にデヴィッド・グレーバーが公開したこの問題に関する小論は予想外の反響を呼び、彼のもとには250を超える体験談が集まった。最終的に11万字以上のデータベースとなったそれらの証言をグレーバーは入念に整理し、2018年に『ブルシット・ジョブ』という本を出した。

「BSJ」の定義は、「被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でさえある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、被雇用者は、そうではないととりつくろわねばならないと感じている」というものだ。

◇5つのブルシット・ジョブ

 BSJには5つの種類がある。取り巻き・脅し屋・尻ぬぐい・書類穴埋め人・タスクマスターだ。

 取り巻きは、だれかを偉そうに見せるために存在する仕事だ。ドアマンや受付嬢、パーソナルアシスタントが例に上がる。取り巻きが実質のある仕事をし、上司がブルシット化することもある。