いじめ「重大事態」の認定を
市教委が避けたかった理由

 一方(6)を受け、市教委は北海道教委に「いじめ」が原因で発生したのではなく、「わいせつ・自殺未遂事案」として報告。その後も道教委からの広瀬さんに対する聞き取りなどを要請されても、加害者側の主張を追認して「いじめ」の存在を否定し続けた。

 前述のデスクは「いじめ防止対策推進法に基づく『重大事態』と認定したくなかった半面、わいせつ問題をすんなり認めたのは、過去に隠蔽を図り失敗したトラウマがあるのでしょう」と解説した。

 推進法は、学校や市教委の隠蔽や責任逃れをしたことが原因で起きた「大津市中2いじめ自殺事件」が契機となって成立した。この重大事態に認定すると、警察を含めた関係各所との連携など、とにかく「大事」になる。学校や教委としても不名誉で、北星中学や市教委が認定を避けたかったという思惑があっただろうことは推測できる。

 一方の「トラウマ」だが、旭川市では1996年、市立中学2年の男子生徒複数が特定の女子生徒にセクハラ行為を繰り返した末、エスカレートして強姦(かん)事件にまで発展。学校は女子生徒から相談を受けていたがスルーし、事件後も隠蔽を図ったことが発覚して批判を浴びた。

 今回の問題は、北星中学の教諭らが広瀬さんの相談にきちんと耳を傾けて対応し、再発防止に努めて心のケアに取り組んでいれば避けられた悲劇だ。結局のところ、北星中学や市教委は大津や前回の事件から、何も学んでいなかったということだ。

教育委が言う「いじめ」
実態は悪質な犯罪

 今回の問題は「いじめかどうか」がクローズアップされたが、教育委員会などが言う場合の「いじめ」は、表現をオブラートに包むための言い回しで、実態は悪質な犯罪である。

 たとえば(1)殴ったり蹴ったりすれば「暴行罪」、(2)けがをさせれば「傷害罪」、(3)金銭を脅し取れば「恐喝罪」、(4)万引などを命じれば「強要罪」、(5)私物を持ち去って隠せば「窃盗罪」、(6)「死ね」などと脅せば「脅迫罪」、(7)私物に落書きすれば「器物損壊罪」――などに該当する。