異業種参入が新たなサービスを生む
――動物病院とスタートアップ・ベンチャーという組み合わせは、確かに新鮮なイメージですね。
生田目 動物病院に限らず、既存のペットビジネス事業者は、多くても売上規模が1500億円程度。100億円以下という事業者が大半を占めています。しかし、そういう中小規模の会社では、スピードの速いデジタル時代に変革を起こすことは難しい。
一方で大企業の異業種参入は資本力、技術力、ブランド力はありますが、ペットビジネスへの知見が足りません。だからこそ、ペットビジネスの専門家と大企業が連携することで、新たな価値提供の実現が一気に可能になってきます。
AIを使ったコミュニケーションプラットフォームサービスや、最近人気のペット用見守りカメラ、自動で健康状態を計測する猫用トイレなど、実際、名だたる大企業がペットビジネスには続々と参入しています。
また、大手鉄道会社では、駅の高架下を利用したペット複合施設の運営など、ペット関連のサービスが1カ所で受けられる利便性を打ち出しているところもあります。
――ペットビジネスがスピード感を持って進化するには、大手企業の参入が重要ということですか。
生田目 はい、その通りです。やはり世の中に普及させるには、大企業の参入が大きなフックになる。そういう意味で、異業種の大企業には、どんどんペットビジネスに入ってきてもらいたいですね。
「ペットビジネスの知見を持つ専門業者」「資本力・技術力・ブランド力を持つ大企業」「新しい価値創造に長けるスタートアップ」といった多様なプレーヤーのコラボレーションこそが、業界の発展を加速させる鍵になります。
――大きな可能性を秘めているペットビジネス市場ですが、これから注目すべき分野としてはどのようなものがあげられますか。
生田目 有望なマーケットのヒントは、現在、ペットとの暮らしの中で感じている「不便さ」にあります。例えば、飛行機や鉄道、ホテルなど、ペットとの移動や旅行。スーパーやコンビニにペット連れでは入れないことに、不便さを感じている人も多いですよね。ペットと飼い主の高齢化によるペット信託、さまざまな決済サービスに関わる分野も、価値創造の芽があります。
動物医療の観点からは、改正動物愛護管理法で生体販売の犬猫に義務化されたマイクロチップの活用には期待したいですね。現在は、マイクロチップには識別番号の情報しかありませんが、これをうまく活用すれば過去の生育履歴や病歴などのあらゆる情報を集約できます。